「ふむ……」
(ドキドキ……)

 真剣な表情で、目の前の少女を見つめるなずな
 その少女……否、女性・亜麻の手には、なずなが一人で作った料理が乗せられた皿が有ります

「うん、料理を始めて四か月でこれなら、十分合格! なーちゃん、良く頑張ったね☆」
「ホッ……」

 亜麻のその言葉に、なずなは心から安心したような表情になります

「あーちゃんもカっちゃんも、良く頑張ったね♪」
「ボクとカレハだけじゃないよ 小毬や佳澄美達も頑張った結果だよ」

 いい子いい子、と言わんばかりに自分の頭を撫でて来る亜麻に、目をそらしながら亜沙

「「うがぁ〜〜〜〜〜〜!!!」」

 そんな大所でのほのぼの空間が流れていたその時、そんな声が響いてきました

「今の……」
「りっちゃんと山中先生の声、ですよね?」
「ですわね ……一体、なにが有ったんでしょうか?」

 もちろんそんな叫び声が気にならない訳もなく、その方向を見に行くと……

「「痒い痒い痒い……」」
「「うぇぇ……」」
「「うっとり……」」

 心から背中が痒い、と言わんばかりの律とさわ子と、口から何かを吐きだすのを我慢しているような乃莉と奈三子
 何故かうっとりしたような表情の唯と紬、そして心なしかショックを受けているような澪がいました


  ひだまりメイドラプソディー 第三十四話 ふわふわ!


「文化祭で使う歌詞が出来た!?」
「はい……」

 その様子の理由を聞いてみると、先ほどの様子から想像出来るような物とは、違う理由が出てきました

「なんか、唯ちゃんとムギちゃんが変な魔法でも使ったかと思ったよ……」
「ま、失礼な!」
「で、どんな歌詞なの? 見せて見せて!」

 妙な心配をしていたなずなをよそに、亜沙は乃莉達が読んでいた一枚の紙を強奪します

「……キミを見てると、いつもハート、DOKI☆DOKI……揺れる想いは、マシュマロみたいに、フワ☆フワ……」
「ど、どうでしょうか……?」
「背中がかゆくなりますよね?」
「何か吐き出したくなりますよね!?」
「素敵ですよね!?」

 それを読み切ると、澪達が感想を聞こうとずい、と身を寄せてきます

「なんと言うか……甘ったるいねぇ……悪くないんだけど、さ あ、魚住君と須尭君もこの歌詞、読んでみる?」

 亜沙の苦笑交じりの一言に「そうそう、悪くは無いんだよねぇ、悪くは……」と言いたげな律、乃莉、奈三子の表情を余所に、亜沙はたまたま来た同学年の男子に紙を渡します

「……才能は、あると思う」
「……需要は無いがな」
「……うぅ……」

 魚住と須尭の評価に、澪はますます涙目になってしまいます
 なずなはそんな様子に、思わず「プラスの評価が聞こえてないのかな〜?」とすら思えてきます

「自分の想いを歌詞に託して、作る……」
「あ、芳野さんだ」

 いつの間にいたのか、芳野が小さいながらも、しっかりとした声でしゃべりだします

「それもまた……歌に対する愛! そう思わないか、秋山?」

 ドンガラピッシャーン!
 その瞬間、なずなは澪の頭上にそんな音が聞こえたような気がしました
 事実、澪は芳野のその一言に、何かしらの感銘を受けたような表情をしていました

「あ、ありがとうございます、芳野さん! 私……私、頑張ります!!」
「その意気や、よし!」
(ね、ねぇ、乃莉ちゃん、なんか芳野さん、タイガージョー先生っぽくない?)
(なんか芳野さん、タイガージョー先生尊敬してるっぽいしね)

 澪と芳野の間に、妙な空気が流れているのに、なずなと乃莉は、微妙にどうでもいい疑問を持っていたのです

 そして二日後……

「今日にて、合宿が終わります! 皆さん、帰りの準備は出来ましたか?」
『は〜い!』

 合宿開始時には、乗馬の自信が無い事をカミングアウトした宇佐美でしたが、この日はしっかりとした表情で生徒達を見つめます

「これから寮、もしくは家に帰るまでですが……それまでが合宿です!」

 そんな宇佐美の言葉に、苦笑いする者から、腹を抱えて笑う者まで、十人十色でしたが、共通認識はやっぱり「お約束だ!」なのでした

「そんにゃ事より……私の活躍、まるでにゃかったような……」
「まぁ、その方が良いんじゃない? 宮ちゃんやゆのちゃんみたいに『いたのに出てこなかった』訳じゃないし」

 そんな中、佳澄美の服に潜り込んでいるラクリマがぼやきますが、佳澄美の一言に「確かにそれでいっか」と言う顔になるのでした

 次回に続く

 あとがき
 オチがやや強引でしたが合宿編、これにて終了です
 次は夏休み用に作ってる、もう一つのプロットをやろうと思います
 ToHeartシリーズや、Only Youに出てくる一部キャラクターの出し方は、コレが一番良い、と思った答えになるかと

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