剣と魔法、そしてモンスターたちが人間と共に支配するこの世界…… 当然ながら、我々が住む世界同様、様々な国があります
 主に、なずな達が通う彩井学園を創設した宗教国家・聖地を中心に、東にアガルディア王国
 南西にジグリム共和国、そして北西にヨーク王国と言う三つの大きな国があり、その他に小さい国が幾つかあります
 気候は私達が住む日本に近く、春夏秋冬四つの季節に区分されるものの、聖地はその中での気温の上下の幅が少なく、王侯貴族は自然豊かなこの国に大小様々な別荘を建てています

「すごぉ……い……」

 ともかく、目の前にある「琴吹家の別荘」と言う存在に、なずなは只そう呟くことが精一杯でした
 他の面々も似たような表情で、只圧倒されるばかりです

「そういえば、ムギん家って、別荘が沢山あるってったよな?」
「うん、でも借りようと思ってたのよりは、凄く小さいの……ごめんね?」

 紬の言葉に、その場にいた人達の体が硬直してしまいます
 ……ムギの家の別荘ってコレだけじゃないんかい……皆の表情は一様にそうものがたっているものになってしまいます

「ま、まぁ、ともかく……とりあえず荷物を置いて、各員が使う部屋割云々も決めなきゃなんないんし、とっとと中に入るわよ!ムギちゃん、鍵お願いね?」
「あ、はい、ただいま!」

 気候が温暖とは言え、今は夏真っ盛り……暑い太陽の下で何時までも突っ立ってる訳にはいかない……そう思ったさわ子は、教師達を代表して、声を上げることにしました


 そして特に問題も無く部屋割も決まり、荷物の整理を終了させると、亜沙以外の料理研究部及び水渕は、簡単な料理を開始します

「そういえば渚〜! 『特別講師』は明日来るんだっけ?」
「あ、はい、そのようです 料理研究部の方も、明日でしたよね?」

 この日の為に、わざわざ亜沙と芦原が作った、合宿のしおりを開きつつ、隣に座った女生徒に聞きます
 彼女はME科三年にて、演劇部部長の古河渚と言い、元々病弱であったが故に一年の時に留年経験があったりします

「特別講師、ですか?」
「そうそう♪」

 その会話を聞きつけたなずなは、亜沙にその詳しい内容を聞きますが、亜沙のその表情は、明日までのお楽しみと言わんばかりの表情でかわされてしまいます

「その前にボクたちは、やるべき事がある……そう思わない?」
「せやな!」
「……その特別講師が来る前にも、休まずに練習か? お前らにしては殊勝だな」

 亜沙と芦原の表情に、須尭と魚住は感心だ、と言わんばかりに頷きますが……

「湖がこの近くにあるっていうし、あっそぶわよ〜!!」
「「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
「「「な、なにぃぃいぃぃぃぃぃいいいいい!!!!」」」

 亜沙、芦原、律の三人の叫びに、須尭、魚住、澪の三人は、真面目に感心して損した、と言わんばかりの絶叫をする羽目になりました


  ひだまりメイドラプソディー 第三十一話 水着!

 
「え、えと! えとえと! 私、水着持ってきてません! ……じゃなくて! えっと!」
「なずなちゃん……気持ちを上手く言葉に出来てませんか?」

 亜沙達の行動に、なずなは叫びますが、唐突な展開に言葉が上手く出てきていません
 しかし如月や澪等、マトモな神経を持ってる人間ほど、何となく程度にはなずなの気持ちを理解しています

「大丈夫よ、なずなちゃん! 私がちゃんと水着を用意してるわ!!」
「……ムギちゃんって一体……」

 紬の一言で、皆一旦練習その他もろもろをする前に、遊ぶことになってしまったのです

 そして10分後、雨情や魚住等、あちこち散歩してみたい、と言った者や、別荘で休憩したい者等を置いて湖に行く事になったのですが……

「澪ちゃんとりっちゃん、遅いねー」
「どうかしたんでしょうかねー?」

 紬の用意した水着に着替えたなずな達ですが、何時までも現れない律と澪の二人に、少し心配になってしまいます

「おっまたせ〜〜〜〜♪」

 その時、律の元気いっぱいの声が聞こえ、その方向を向きますが……

「ホラ澪〜 泳ぐんだから、そんなにこそこそすんなよぉ」
「だ、だぁってぇ……こんな大胆な水着だって思わなかったから……」

 なんと澪は、顔を真っ赤にして、湖の方向に行きたくない、と言わんばかりの表情になっており、律の後ろにこそこそ隠れています

「全く秋山は〜! とっとと出てこんかい!!」

 そんな澪の態度に業を煮やした芦原は、彼女の腕を引っ張りましたが……
 その視線が、暫くある一点に集中した後に……なんと澪の頭を全力で殴ったのです!

「い、痛い……」
「その程度のビキニで何アホな事抜かしとんねん! てか、その胸と尻のデカさは犯罪や! 鬼!悪魔!」
「あーさん、そんなにワガママ言っちゃ駄目よ?」
「そういやぶちさんも時雨も鬼や! うちみたいな持たざる者の敵やぁ〜〜〜〜!」

 涙目になってさらに澪に殴りかかろうとしますが、水渕に止められてそれは未遂に終わりますが……
 なずなと如月は、そんな芦原の態度に激しく首を縦に振りたい気分に駆られています

「でも私の友達が言ってましたよ 貧乳はステータスで希少価値があるって」
「ホンマ!?」

 楓のフォローで芦原は、あっさり笑顔に戻ります しかし……

「あーさん……それって所詮「持たざる者」の言い訳じゃあ……」
「うわぁぁぁぁぁ〜〜〜〜ん! ぶちさんのアホ〜〜〜〜〜〜〜〜!! コレで勝ったと思うなよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 水渕の一言で、芦原は泣きながら別荘の方に走り去って行きました

「勝ったと思うなって、芦原先輩……」
「みっちゃんも、アレはちょっと酷いような気が……」
「まぁ、とりあえず遊ぼうぜ……澪も何時までも私の後ろに隠れてないで、さ?」
「うぅ……」

 芦原が気にならない、と言えば嘘になりますが、とりあえずなずな達は遊ぶことに専念するのでした

 そして夕方になり……

「さて、これから夕食の支度となる訳ですが……」

 食堂に集まった皆を見て、亜沙は重々しく声を出します

「我ら料理研究部が総力を結集して夕食を作りたい、と言いたい所ですが、一部にあるリクエストが出てきました」
「リクエスト、ですか……」
「そう、リクエストです」

 なずなの一言に、それを待ってましたと言わんばかりの声を上げます
 魚住や須尭と言った三年生や、なずな以外の料理研究部は「また何か企んでるな……」と言う表情になります

「リクエストがあった、と言うのは本当です あーさんとか、友兼妹氏とか、野田ちゃんとかね」
「……アレ、やるのね……友兼君みたいに体の弱い子もいるんだから、手加減だけはしてね?」

 水渕の一言に、その場にいた一部は、背中に嫌な汗が流れて行くのを実感していくのが分かりました……

 次回に続く

 あとがき
 ようやく合宿編スタートです まぁ、お約束として初日は遊び倒させてもらいました
 オチを読むと、GAを知ってる人は、次の展開はかなり予想出来るかと……(ぉ

inserted by FC2 system