「ん〜っ! シャバの空気ってやつだねっ♪」
「もう、乃莉ちゃんってば……」

 テストが終わり、なずなも乃莉もそれから受けるプレッシャーから解放され、緊張した表情から普段の表情に戻って寮に戻っていました

「あぁ、なずなちゃんに乃莉ちゃん、ちょうど良かった!」
「あ、杏子さん! どうしたんですか〜?」
「うん、ちょうどカボチャとトマトがきらしちゃっててね〜 買いに行って欲しいんだけど」
「はいはい〜 今の私は何でもしますよ〜♪」

 杏子が申し訳なさそうに頼みごとをしますが、逆に乃莉はテスト終わりで機嫌が良く、なずなの返事を待たずにあっさり返事をしてしまいます

「何でも……ねぇ……?」
「の、乃莉ちゃん!は、早く買い物行こうっ!!」

 乃莉の一言に一瞬で変化した杏子に不穏な物を感じたなずなは、乃莉の腕を引っ張って八百屋に走って行きました

「やれやれ、冗談のつもりだったのに……」
「いや、あの表情は冗談に見えませんよ」

 なずなと乃莉を見送りつつぼやく杏子に、呆れたようなツッコミを入れるのは、大学部KN科一年の小西ななこと言い、幼いころに母親を亡くすだけでなく、騙されやすい父親、バカ兄、変な友人に囲まれる苦労人だったりします

「それより杏子さん、良いんですか?」
「え?何が?」
「だって、あの八百屋さん……」
「あ……」

 ななこの一言に、杏子は少し後悔したような表情になっていました……


   ひだまりメイドラプソディー 第二十七話 トラブル?


「いや〜、ごめんごめん、ちょっと調子に乗りすぎたね」
「もう、乃莉ちゃんってば……」

 乃莉の反省してるのかしていないのか分からない表情に、なずなは只呆れるような表情をして、溜息を付くことしか出来ません

「っと、ここだね……すいませ〜ん!カボチャとトマト欲しいんですけど〜!」

 目的地である八百屋を見つけた乃莉は、家の中にいるであろう店の人に聞こえるであろう大きな声を上げますが……

「あがっ!!」
「の、乃莉……うくっ!!」

 なんと乃莉の顔に大きな何かがぶつかり……それを確認しようとしたなずなの顔にも、もう一つの大きな何かがぶつかったのです

「いたたた……なずな、大丈夫……?」
「痛いけど、なんとか……」

 お互いの無事を確認し合うと、次は自分たちに直撃した物を確認します

「コレって……」
「カボチャ、だよね……?」

 良くこんなものの直撃を受けて無事だったな……そんな疑問を置いておき、飛んできた方向を見てみると、小学生ぐらいの女の子が物影に隠れてこちらをうかがっていました
 その表情から、どう考えてもその女の子が犯人だ……そう思った乃莉は、腕まくりをして……

「ねぇあなた……おねーさんとちょっとお話しよっか……?」
「の、乃莉ちゃん、気持ちは分かるけど穏便にぃ〜!」
「なんだなんだ、騒々しいなぁ〜」

 この騒ぎを聞きつけたのか、さらに奥の方から髭面の大男が現れます
 多分この女の子の親だろう……そうなずなが思いながら男をみると……その男は、二人を見て固まっています

「「……あ、あの……?」」
「め、メイドとシスターが攻めてきたぁっ!!!!」
「「え……せ……攻め……?」」

 その態度に疑問を持った二人でしたが、突然の叫びに二人は只頭に「?」を浮かべるだけでした


「いや〜、二人ともゴメンね〜」
「い、いえいえ、吃驚したけど、気にしてませんから……ね、乃莉ちゃん?」
「……お陰で晩御飯があんまし入んないけどね……」

 二時間後、目的の物をなんとか購入できた二人は、杏子に件の八百屋について聞いてみることにしました
 それもこれも、二人を見た男……八百屋の店長が、二人を店の中に連れ込み、やれケーキだジュースだ何だかんだと出して、二人をもてなし始めたからです
 店長の娘・若葉の不機嫌オーラが気になったものの、それでも出された物を頂かない訳にもいかず……なんとか今寮に戻る事が出来たのです

「家の中に上げてもらったら分かると思うけど……あそこの店長さん、メイドとシスターが好きで……」
「そういえば家の中にメイドとシスターの絵がいっぱい飾られてましたね……」

 杏子と一緒にいたななこの説明に、二人はつい納得してしまいます

「まぁ若葉ちゃんに関しては気にしないであげて 只単純にメイドとシスターにヤキモチ焼いてるだけだから」
「「あー……」」

 そして杏子の一言に、なずなと乃莉は、気にする気にしない以前に、若葉の不機嫌な表情に、やっぱりと納得してしまったのでした

「……シャバって、いい事ばかりじゃないよね」
「乃莉ちゃん、そのネタまだ引きずってたの?」

 しかしなずなは、乃莉の一言にただ呆れることしか出来なかったのです

 次回に続く

 あとがき
 長編ってのは、難しいですね やれ構造だ、やれ何処で誰を出すかだ……と
 前回はコレをテスト返却の後に書こう、と思ってましたが、展開的にコレがベストかと思って、先に出させてもらいました
 んで、今回はイチロー!の主人公・ななこと八百屋の店長、そしてその娘若葉が初登場ですね
 このSSの設定上、巫女さんを数出す訳にはいかなかった為、店長はメイド及びシスター萌えに変更させてもらいました あしからず(苦笑)

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