「あぅぅ……頭痛い……」
「我慢して 澪や律や奈三子さんに殴られるよりは痛くないでしょ?」
「今のは唯ちゃんが悪いよ……」

 さて、前回全身虎男なKN科教師・タイガージョーに不敬を働いてハリセンチョップを食らった唯は、そのまま地面にうずくまって頭を押さえています
 そんな唯に追い打ちを掛けるように、なずなと乃莉も厳しい言動を浴びせます

「ここにいたのか、タイガージョー」
「おぉ、勇二か どうした?」

 そんな時、一人の男子生徒……KN科二年の魔神(まがみ)勇二が現れます

「兄さんと烏丸が呼んでいる 職員室で待ってるって言ってたな」
「分かった すぐに行こう……どうやら今日はこれ以上お前たちに教える事が出来ないようだ ライバルに対する答えが見つからなかったら、また明日会おう!」

 そして言葉と共に、全身虎ずくめの大男は、風のように去って行きました

「それで、平沢と言ったな……ギターについて教えてほしかったら、今すぐ音楽室に行くが……どうする?」
「行きます行きます!宜しくお願いします!じゃあ二人とも、頑張ってね〜!」

 さらに唯は芳野に連れられ、校内に戻って行きました

「勇二、組み手の相手頼む……って、またお前らか……どうした?」
「あ、あの、ライバルを探していて……」
「は? ライバル?」

 そして唐突に表れた透夜に、簡単に事情を説明すると、一瞬でキョトンとした表情になってしまいました


    ひだまりメイドラプソディー 第二十五話 ライバル!(後半)


「あっはっはっはっはっはっはっは……あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
「透夜……流石にそれは笑いすぎだ」
「すまん……だけど……ライバルを探すって……あっはっはっはっはっはっは!!!」

 なずなが今やってることと、その理由を話すと、透夜は問答無用に大笑いしてしまいます
 勇二は透夜をいさめますが、当の大笑いされたなずなの方と言うと、ここまで大笑いされて気分を害する所か、逆に清々しさすら感じてしまいます

「まぁ、ライバルが欲しいって事は、努力したい、って意気込みの表れではあるのは事実……なのか?」

 不意に笑い止んだ透夜は、真面目な表情になり、率直な疑問を勇二に求めます

「でも、彼女の気持ちは分かるんじゃないのか? 俺たちだって似たようなモンだろう」
「そうだな……えっと、なずなだったな? そもそもライバルと言うのはどーいうものだと思っている?」
「え? えぇっと、えぇっと……」
「なずなぁ……ライバルの定義も考えずに探してたの……?」

 透夜の質問にあっさりどもるなずなに、乃莉はちょっとだけ切ない気持にさせられてしまいます

「まぁ少し意地の悪い質問だったか……じゃあ、ライバルと友情は成立すると思うか?」
「え? 成立、するんですか?」

 透夜の言葉に、なずなは凄く意外そうな顔をしますが、そんななずなの態度に、透夜は不敵な笑みを浮かべます

「はっきり言おう……成立する!!」
「そ、その理由は!?」
「ま、俺が同じクラスの奴らにだけは、負けたくねーと思ってるからさ」
「で、でも、風見先輩って、KN科二年じゃあ一番強いって話ですけど……」

 乃莉の言葉に、透夜はちょっとだけ哀しそうな表情をした後、視線を巡らせて、目的の女生徒を見つけます

「あそこで弓を使ってる女生徒……あれは生徒会の曽我部ってやつで、KN科の中じゃあ一番の弓の使い手だ」
「す、凄い……矢が外れないってレベルじゃ無い……もう十本以上は討ってるはずなのに、殆ど真ん中にしか当たって無い……」
「この勇二と真人、そして生徒会の坂上は、格闘技のプロフェッショナルだ 同じ土俵に立つと、まず勝たせてもらえない」
「「と、智代先輩もですか……」」

 以前にも聞いた話ではあったものの、やはりなずなと乃莉は、智代が誰かを殴ったり蹴ったりするシーンを上手く想像出来ません

「他にも、謙吾にしろフェインにしろ二木にしろ、実力はあるし結構仲は良いけど、だからこそ負けたくねー、って言うか……そんな感じかな?」
「成程……」
「お前たちは何のために何を成したいのか……」
「「え?」」

 自身のライバルに対する持論を言い終えた後、透夜は何かのナゾナゾの様な事を聞いてきました

「それに対する答え持っていれば、お前達にライバルが必要かどうかも、自ずと答えが出てくるんじゃないのか?」
「あ……」

 透夜の言葉に、なずなは弾かれた様に透夜の顔を見上げます 透夜の言葉の意味が何となく理解できたからです

 それからなずなは、透夜と勇二の組み手を少し見学して、寮に帰ることにしました

「それでな〜ちゃん、ライバルは見つかったの?」
「いえ……」

 そして偶然小毬に出会い、夕食を共にすることにしました

「そっか〜 残念だね〜」
「はい!でも……ライバルがいなくても、多分大丈夫です!」
「そっか」
「大事にしたい人の為に、まず何をなすべきか……まず、それを考えようと思います!」
「それ、風見君の持論を少し変えた言葉だね?」
「はい!」
「なずなちゃ〜ん……」

 なずなの答えに、小毬が満足そうな表情を見せたその時でした なずなは妙な声に呼ばれます

「ゆ、唯ちゃん!?」
「す、数時間ぶり〜」
「ど、どーしたの、その声!? なんか数時間も水を飲んでないような声だけど!?」
「そうなんだよ〜 芳野さん、この数時間お茶どころか水すら飲ませてもらえなくてぇ……」
((よ、芳野さんって、どんなスパルタ教育を唯ちゃんにしたんだろう……))

 今にも泣き出してしまいそうな唯の言葉に、なずなと小毬は芳野に対して、激しい疑問を感じてしまっていましたとさ

 おしまい

 あとがき
 とうとう二十五話となりましたね〜 ネタが降りてこない限り、次で一学期で終わりの予定となります もちろんその次は夏休みのお約束につながります
 んで、今回は前回のライバルの後半ですが、ONLY YOUの主人公、魔神勇二初登場です
 書いてる途中思ったのですが、こいつToHeart2の主人公の幼馴染雄二と同じ名前だったのよね……と思ってしまいました
 それにしても、唯って結構いじり甲斐が有ると言うか……声に関しては、原作では学園祭前にさわちゃんの特訓に付き合わされたアレが元ネタだったりします

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