「ライバル……ライバルか 確かにその存在は己の成長と言うのもには必要不可欠なのかもしれないな……」
「その通り!!周りの人間の成長も意識し、己の努力を忘れるな!!!」

 律太とリリの激戦と言う名を借りた練習試合の次の日の放課後、なずな達は目の前の二人の男に語られていた
 片方は芳野裕介 彩井学園KN科卒業生にて、彩井学園ME科三年担任である伊吹公子の婚約者でもあり、この学園では元々軽音部に所属していました
 もう片方はこの彩井学園でも最も異色の教師とされる男、タイガージョーで有り、その顔はもとより、全身全てが、なんと二足歩行で歩く虎の形をしているのです

(乃莉ちゃぁん、私、そろそろ帰りたいんだけど……)
(私も帰りたいよぅ……)

 この二人の男と出会ってから三十分、なずな達は熱血バカとも言うべき男二人の語りに、正直言って逃げ出したくなって行きました
 そんな時でした 唯がタイガージョーの前に立ち、その首に手を掛け……そのまま上下にゆすり始めたのです!!

「や、やっぱり取れないよ〜 このマスクみたいなの、被り物じゃ無かったんだ〜!」
「唯……正直グッジョブだけど、空気読もうよ……」
「少女よ……(怒)」

 ベシィ!!
 乃莉の呟きの直後、そんな小気味のいい音と共にタイガージョーは唯に対して、なんとハリセンチョップを決めてしまったのです

「私は生まれた時からこの姿だぁッ!!」
「ぐふぅ……」
「唯……男子だったら確実に鉄拳制裁だったからね……」


    ひだまりメイドラプソディー 第二十三話 ライバル!(前半)
 

「それで、内藤先輩とリリ先輩は一カ月に数回、あんな感じで勝負してるの」
「だけど今回みたいに引き分けになる、ってのがほとんどだね〜 毎度毎度凄い勝負なのは事実なんだけど〜」

 さて、そもそもなずな達がこの二人の男に捕まったのは、律太とリリの勝負の顛末をなずなのルームメイトであるゆのに聞かされたからです

「私も、ライバルとかそー言ったの、必要なんでしょうか……」
『は? ライバル?』

 なずなの一言に、乃莉達は驚いてなずなを少し見つめた後、思わず噴き出してしまいました
 もちろんなずなをバカにしている訳では無く、可愛らしい外見だけを見ても、彼女にライバル云々は微妙に似合わないような気がしたからです

「な、何で笑うんですか〜!」
「ごめんごめん じゃあ明日にでも探して見る?」
「う、うん……」


 と言う訳で放課後、なずなは乃莉と一緒にライバル探しを始めることになりました しかし……

「ライバルってなんか良い響きだよね!」

 と言う一言で、何故か唯も一緒に行動することになってしまいました
 とりあえず部活はいいのか?と言うツッコミをしたかった二人ですが、その感情を無視して、三人で行動を開始しました
 しかし……

「棗鈴!今日こそ決着を付けますわよ!」
「お前は……さささがわささら!」
「さ、さ、さ、笹瀬川(ささせがわ)佐々美(ささみ)ですわぁぁぁ〜〜〜〜〜!!しかも名前の方は生徒会長の名前ですわぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

 とりあえず部活の休みをお願いしに行こうとして、調理実習室に行こうとしたその途中で、妙な騒ぎを起こす二人の生徒……棗鈴、そして彼女のクラスメイトで笹瀬川佐々美を見かけました

「今日も今日とてりんちゃんとさ〜ちゃんは仲良くトムとジェリーだね〜♪」
「あ、小毬先輩!こんにちは」
「な〜ちゃん、こんにちは〜」

 そしていつの間にか現れて、鈴と佐々美の様子を見ていた小毬に、本日は休むと言う旨を伝えることにします

「ふぇ〜 ライバルを探す旅をするんだ〜…… ちょっと楽しみだね〜」
「楽しみですよね〜」
「あ、あの、旅って程大仰な物じゃないんですけど……」

 状況は一応完璧に分かっているのだろうけど、小毬はなずながこれからしようとする事を「楽しみ」の一言で片付けてしまいます
 むしろ乃莉は自分たちと一緒に行動している唯の方が状況を分かっていないような気さえしてきます

「とりあえず校舎の中にいるより、グラウンドや鍛錬場に行ってみると良いよ? な〜ちゃんのライバルは見つからないかもしれないけど、参考になると思うから」
「はい!」

 小毬の言葉に元気よく答えた後、なずなたちは校舎の外に出るために駈け出して行きました

「小毬さん」
「あ、理樹君!」
「アレで良かったの?」
「多分アレで良かったんだよ〜 ライバルは見つからなくても、な〜ちゃんなら自分らしい答えを出せると思うし〜」
「……そうだね」
「それより理樹君はどうしたの?」
「鈴を探してるんだけど、知ってる?」
「りんちゃんはさ〜ちゃんとあっちの方に行ったたよ?」
「ありがとう小毬さん」
「りんちゃんとのデート、頑張ってね〜♪」
「バレてるッ!」

 それが為かどうかは分かりませんが、小毬が理樹とこんな話をしているのを、なずなは分からなかったのです


「なんか、なかなか見つからないね〜」
「そうだね〜」
「なんか大変だね〜」

 目の前に繰り広げられる、幾つかのKN科同士の練習試合を眺めながら、なずな達はのんびりベンチの上で座っていました

「ライバルってのもなんか難しいね〜」
「うん……」
「ライバル、か……」

 唯の言葉に頷いたなずなですが、もう一つそれに答える言葉が有りました
 その方向を向くと、ギターを弾いてる一人の男がいました

「怪しい者では無い……俺は芳野祐介 ここの教師、伊吹公子の婚約者だ」
「あ、あのっ! 平沢唯と申しますッ! あなたにお願いが有りますッ!」

 唯の言葉に自己紹介を……と思ったなずなと乃莉でしたが、唯は直立不動の体制で、芳野に頭を下げます

「見た所ギターがかなり上手と見ました! 私にギターを教えてください!!」
「俺で良ければ喜んで……そう言いたい所だが」
「そんなっ!」

 芳野の答えはノー……そう思った唯に泣きが入ります しかし……

「まずはそちらの二人の方を優先すべきだと思う……そう思いませんか?タイガージョー先生……」

 言葉と共に、芳野はその身を寄せていた木の上を見上げます
 それにつられるように三人はその木の上を見上げると……
 そう、全身虎を連想するような男……タイガージョーが直立不動で立っていたのです……

 次回に続く

 あとがき
 このSSを読んでる皆さんは、PS2専用AVGゲーム「ONLY YOU〜リベルクルス〜」と言うゲームを知っているでしょうか?
 AVGの中では確実に一二を争う熱さ……身も蓋もない言い方をすれば、Gガンダムを連想する程の展開だったりします
 んで、そのONLY YOUから、主人公の師匠キャラ、タイガージョーが初登場です
 この人、主人公が珍行及び珍言をするたびに鉄拳制裁をする熱い人(虎?)だったりします 流石に女の子相手に殴らせる訳にはいきませんでしたが、ね
 それと同じく今回、クラナドからは愛の伝道師・芳野さんが初登場です この今回初登場コンビ、個人的には好きですが、近くにいたらなんか微妙に嫌な感じもするんですよねぇ……(笑)

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