彩井学園の校舎は、よく地鳴りが置きます
 我々の世界の学校同様、3階建ての校舎なので、建付けの悪さが原因だ、という訳ではありません
 一応壁の材質は木なのですが、魔法で校舎の周りを強化しているので、流星を召喚して地面を叩きつける魔法・メテオでも簡単に壊されない造りになっています

「……どうやら、来ましたね」
「え? えぇ?」

 怪談騒ぎから二日経った日の放課後、料理実習室で部活中だったなずな達ですが、その途中で副部長カレハが小さく呟きました
 その普段とは微妙に違う態度に、なずなはちょっと驚きましたが、直後に起きた地鳴りに「もしかしてコレの事!?」と思ってしまいます

「っちゃぁ〜……稟ちゃんったら、よりにもよってこのルートを選ぶ訳ぇ?」
「り、りんちゃんって、土見先輩ですか!?」
「あ、そっか、なずなは知らないんだっけ これは一応後学のためにも、見ておく必要があるか……」

 亜紗の説明に、なずなは「後学って何の?」と言うツッコミをしたい気持ちを抑えて、彼女に付いて行くと……
 そこには山ほどいる生徒が、廊下を全力疾走している姿が目に入りました
 その先頭には、稟の姿があり、彼の表情を見る限り大量の生徒達に追いかけられている、と言うのが分かります

「あ、亜紗先輩……アレって……」
「なずなも知ってるでしょ?この校舎で数日に一回地鳴りが起きてる事」
「その答えがアレ、ですか?」

 亜紗の説明に、何故こうなったのか聞きたいなずなですが、とりあえず聞かない方が色々面倒がなさそうなので、スルーする事に決めます
 そんな時でした

「稟様に仇なす者は……」
「あー……やっぱこーなるか……」

 呆れたような亜紗の声に、怒った声の方を向くと、一人の女の子が経っていました
 彼女はMG科二年のネリネ……通称リン……であり、この世界に住んでいる種族の一つである魔族達の王フォーシベイの愛娘です
 魔族と言っても、人間と嫌い合って戦争を起こす、と言う事は昔はあったものの、今や他の種族にはただ単に「攻撃魔法が上手な種族」程度の認識しか持たれていません
 閑話休題

「ちょ、ネリネ!ストップストップ!」
「消え去るがいい!」

 稟を追っかけていた連中は、ネリネを確認すると、潮の満ち引きの如く引きさがろうとし、稟もネリネを何とかなだめようとしますが、それも効果なし
 ネリネの手から、強力な衝撃波が放たれて……

「「マナよ、光放つ薄衣となり害意を跳ね除けよ! レジスト!!」」

 とりあえず巻き込まれそうになったなずな達料理研究部の面々は、亜紗とカレハの対魔法バリア魔法レジストで何とか難を逃れたのは、別の話……


   ひだまりメイドラプソディー 第二十二話 プリンセス


「にしても、毎度毎度よく飽きないな、こいつらは……」
「まぁまぁ、稟君が悪い訳じゃないんだから、稟君を責めるのはお門違いだよ、透夜君?」
「責めてるんじゃなくて、呆れてるんだがな」

 ネリネの攻撃魔法で出た大量の犠牲者達(と言っても稟以外は自業自得なのだが)を、カレハと共に治してあげつつ透夜のツッコミを窘めるのは、ネリネの親友でME科二年リシアンサス……通称シア……と言います
 彼女もまた、この世界に住む種族の一つである神族達の王ユートリマの愛娘です
 神族は元々神に最も近い種族、とされていましたが、今や只単に「治癒魔法が得意な種族」程度の認識しか持たれていません

「んで、こいつらは今回、何で稟を追っかけまわしてたんだ?」

 透夜の視線の先には、ネリネの手によってボロボロにされた男子生徒の山でした
 山と言う表現には語弊が無く、透夜を始めとした、フェインや真人、謙吾と言ったKN科二年男子の手によってこの山が築き上げられて行ったのです

「実は昼休み、稟君が迷子の女の子を家まで送って行ったので……」
「毎度の事ながら訳分からんな こいつらの認識だと稟は小さい女の子をたぶらかした、って事かよ……」

 楓の説明に、透夜は深い……深いため息を付く事を禁じえる事が出来ません

「あの、楓先輩……」
「なずなちゃん、なんですか?」
「あ、あの、あの二人……」

 そんな中、なずなは人の山と、ネリネ及びシアの二人を見ながら、楓に話しかけますが、それでも何か言いづらそうな表情になります

「ネリネとシアが一国の王族だってのをあんま信用出来ないんだろ?」

 透夜の一言に、なずなは激しく首を上下に振りますが、その場にネリネとシアがいる事を思い出し、ちょっと居心地の悪そうな表情になってしまいます

「ま、安心しな 俺もあの二人が王族だってのを、たまに忘れるから むしろそー言う扱いを嫌ってるフシがあるみたいだし?」

 透夜のもう一言に、なずなは二人を見てみます ネリネは気絶している男子生徒に怒りをぶつけ、シアはその男子生徒達を治癒魔法で治して行きます
 その二人の雰囲気は、一国のお姫様、と言う感じはあまりせず、何処にでもいるような普通の女の子にしか見えません

(王侯貴族と言っても普通の人間とあまり変わらない 俺はそんな人達のそう言う部分をさらけ出せる存在になるために、勉強をしに行きたい)

 そんな時、なずなはそんな声が頭の中に響きました
 それは5年半前、律太が彩井学園に受験をしに行く時に、なずなに言った言葉でした

(私も、頑張んなきゃ……律太さんみたいに、凄い人間になりたい……!)

 そしてなずなは、小さくも強い決意を胸に刻み込むのでした
 憧れの優しい騎士候補生に、少しでも近づけるように……

 次回に続く

 あとがき
 二週間ぶりでようやく更新となりました
 今回のメインはSHUFFLEのメンバー……ネリネ及びシアのお姫様コンビですね 一応お姫様はライブレードからも何人か出ていますが、そちらは後回し、って事で
 まぁSHUFFLEにも、他にリコリス、キキョウがいますがこっちも後回し……原作ではリコリスは死んでいる設定ですが、まぁそこんところは無視、って事で
 次からは、バトル的な意味での激しいシーンをふんだんに盛り込みたい……と思ってます

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