鬱陶しい雨……梅雨の季節が終わり、今度は太陽が支配する暑い夏の季節がやってきました
 彩井学園が設立されている国・聖地では、自然も少なくなく、温暖な気候で各国から避暑地として王侯貴族が来る事で有名な国ですが、なずな達が入学したこの年は珍しく猛暑に見舞われていました

「あぁ〜つぅ〜いぃ〜よぉ〜」

 朝のHRが始まる前、机に突っ伏してその暑さにへばり不満を口にするのは柚原このみと言い、ここ彩井学園に通う幼なじみのお姉さんみたいになりたい、と言う憧れでここに入学しました
 このみもそうですが、このクラスの何人かはこのみ同様心から暑いと言わんばかりの表情をしています

「お茶、飲む?」
「空ちゃん、ありがとぉ〜〜」

 そんな状況だと言うのに、何故か一人平然とした表情の空が、このみと彼女にうちわをあおぐなずなにお茶を渡します

「ふぅ〜 生き返るのでありますよ〜!」
「……よかった」

 未だ机に突っ伏してる物の、それでもその表情は少しは普段のこのみに戻り、空は安心したような表情になります

「それよりなずなちゃん……」
「? どうかしたの?」

 そんなふんわか空気の中、如月が何かに気付いたのか、なずなに声を掛けます

「唯ちゃんと奏ちゃんがまだ来て無い様なんですけど……知ってますか?」
「あ、そう言えば……」

 如月の一言になずなは周りを見渡しますが、彼女の言う通り、その二人の姿が見当たりません

「奏ちゃんは食堂に来てたのに……」
「ちょっと様子を見てきますね」

 不安そうな空の一言にはじかれた様に、如月が寮に様子を見に行こうとしたその時、教室のドアがノックされました
 そしてそのドアが開けられると、そこには風紀委員長・瑞穂が両腕に何故か真っ白になっている唯と奏を抱えて立っていました

「とりあえず奏ちゃん達連れて来たけど……まず保健室に連れてった方が良いのかな?」

 瑞穂のその一言に、その場にいた生徒たちは「さっさと連れてけ!」と言う前に「どーやってドアノックしたんだろう」「どーやってドア開けたんだろう」と言う疑問が沸いて出てきていました


   ひだまりメイドラプソディー 第十九話 梅雨明け!



「いやいや、皆さん……ホント御心配おかけしました……」
「申し訳ないのですよ〜……」

 結局、唯と奏は空が持っていたお茶を飲ませるとあっさり復活してくれました
 そして昼休み、二人は申し訳なさそうな表情で、素直に頭を下げます

「そう言えば唯ちゃん、朝食堂に来て無かったようだけど、大丈夫?」
「あ、うん、お陰で奏ちゃんには迷惑をかけちゃったよ〜 奏ちゃんもごめんねぇ〜」
「あ、いえ、それは大丈夫なのですよ〜 それより、奏の方こそ、申し訳なかったのですよ〜」

 そしてなずなが素朴な疑問を投げかけると、唯と奏はお互いに頭を下げあいます
 そんな展開に周りの生徒は頭に「?」を浮かべます

「それが、朝唯ちゃんがフラフラになってたので、声を掛けてみたのですが……」
「うん、あまりの暑さで……それで途中まで連れてもらってたんだけど……」

 二人の説明で、クラスの皆は何となく展開が理解できてしまいました 140CMとクラスの中で最も小さい奏が156CMもある唯を……しかも炎天下の中学校まで来たのだから……

「あ、そー言えば、ギー太は!?奏ちゃん、知ってる!?」
「ぎ、ぎーた!?」
「唯ちゃんの使ってるギターの事よ」

 唯の突然の一言に不思議そうな顔をした奏でしたが、紬の言葉で、普段唯が背負ってるギターを思い出し、納得したように手を叩きます

「朝見た時は持ってませんでしたよ 多分部屋に忘れたのかと〜」
「そっかぁ……面倒だけど、部活前に一旦寮に戻んないとダメだね〜」

 この暑い中で〜とか、不平をたらしますが、こればっかはしょうがないよね〜と諦め顔になります
 そんな時でした

「怪談をしよう!」
「そりゃあ良いな!」
「やろやろ〜!」

 なずな達の後ろから、律が彼女たちに話しかけたのです 律と一緒にいる友兼と野田も一にも二にも賛成と言う顔でそこにいました

「暑い時こそ怪談!暑いのが嫌なら、怖い話をして、背筋を凍らすのが一番の近道だとは思わんかね、諸君!」
「それじゃあ、僭越ながら奏が今からやらせてもらうのですよ〜!」

 律の言葉に真っ先に声を上げたのが、意外なことに奏でした
 その場にいた皆が、恐怖よりも先に「お前ネタ知ってんのかよ」と言う表情になりますが、皆彼女の「こっちに来て欲しいのですよ〜」との一言に、素直に応じることにしました
 そして、途中で奏が途中で足を止めると……

「はいっ!「かいだん」なのですよ〜!」
『…………』

 奏は階段を指さし、一言そう言いました その言葉を聞いたなずな達は、どうコメントして良いか、分からない表情になります

「おい、友兼に野田よ……」
「言うな! 分かってる……分かってるぞ、律よ……」
「なんとなーく、このオチは分かってたんだし……ね?」

 怒りに体を震わせる律の両腕を抑える友兼と野田 そうしないと律は奏に今すぐにでも襲いかかりそうな気がしたからです

「くそー!こーなったら澪呼ぶぞ澪! 今夜は怪談だ〜!」
「わ〜 楽しみなのですよ〜♪」

 そしてその二人の腕を解いた律は、問答無用に叫びます
 そんな律の一言に、満面の笑みを浮かべた奏に対して「奏ちゃんって怪談大丈夫な人だったんだ……」と心から意外そうな表情を浮かべました そのせいでその場にいた皆が、怪談強制参加にされたのでした

 次回に続く

 あとがき
 今回は梅雨明けのお話となりました 沖縄当たりだと、夏はかなり厳しい暑さになるんでしょうねぇ……と思ったりしますが、どうなんでしょうね〜?
 んで、今回はToHeart2から主人公の妹分、このみが初登場です 出来ればもうちょっと活躍させたかったのですが、それは次回に持ち越しとなりました
 怪談で階段〜のギャグは、知ってる人には知ってるトリコロネタです 流石に演劇部員の奏にこのネタ言わせるのはまずかったか?とは思いますが……
 当然次回は怖いお話です 当然幽霊も……出るかもしれませんし、出ないかもしれません どっちでしょ〜?(笑)

inserted by FC2 system