何度も説明しているようですが、この世界は剣と魔法、そしてモンスターとデミヒューマンが人間と共に共存する世界です
 そんな世界に存在する彩井学園は、我々の世界の学校同様、身体測定と呼ばれる物が存在します

「あ、あの……ヒロ先輩、亜紗先輩、愛佳先輩……」

 その日を数日後に控えた6月中旬のある日、ひだまり荘の食堂でなずなは目の前にいる、凄い表情をしていた上級生、愛佳と亜紗、そしてヒロに声を掛けてみた物の、凄まじい表情で睨み返されます

「あ、あの、宮子先輩、カレハ先輩……」
「あらあら、ヒロちゃんも愛佳ちゃんも亜紗ちゃんも相当頑張ってるようですわ♪」
「なずなちん、ここはそっとしておくべきだよ!」
「い、いえ……そう言う問題じゃなくて……」

 どうしたらいいか、分からないなずなは、近くにいた普段から仲良くしてくれる宮子及びカレハに助けを求めてみた物の、元来天然な二人からは明確な答えをもらえません

「宮ちゃんとなずなちゃんは余裕あるよねぇ……」

 そんな状況に、只オロオロするなずなに、ゆのの恨めしそうな声がかかります

「ゆっ、の、せんっ、ぱい……」
「宮ちゃんもなずなちゃんも、ほんっっっと――に余裕あるよねぇ……もうすぐ身体測定だってのに……」

 ゆのの一言に、思わず引きつった声を出したなずなに、ゆのは普段の穏やかな表情とは正反対の表情をなずなと宮子に向けます
 そんなゆのになずなは思わず逃げ出したくなりますが、それだけは絶対にすまい、と自分の中の何かが自分の心に命じます

「あー……お腹すいた〜〜 ご飯〜〜〜〜!」

 そんな時、空気をあからさまに読んでない声が乱入します 背中にギターを背負った唯が、心からお腹がすきました、と言わんばかりの表情で入ってきたのです

「杏子さん〜 カレーある?カレ〜〜〜!」
「はいはい、全く唯ちゃんは……」

 周りの状況に全く気付いてないのか、唯は子供のように杏子に食べ物をねだります そんな唯の態度に、亜紗達……特にヒロの表情が凄まじい形相になっていきます

「あ、あのね、唯ちゃん……」
「?なぁに、なずなちゃん?」

 無邪気な……心から無邪気な笑顔で杏子からカレーを受け取り貪り始めた唯に、なずなは恐る恐る尋ねます

「そんなの食べて、身体測定、大丈夫なの?」
「うん、だいじょぶだいじょぶ! 私、一杯食べても太らないから!」

 その唯の答えの直後に、なずなはブチっと言う、何かが切れたような音が聞こえた気がしました
 そしてその方向を向くと、幽鬼のように立ちあがった亜紗が手に魔力弾を発生させ、徐々に大きくしています

「あっ、亜紗先輩!落ち着いてください!」
「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお……………………!!!!!!」

 亜紗はなずなの声が聞こえてない様に、徐々に力を溜めて行きます
 なずなは助けを求めるために周りを見渡してみますが、亜紗の近くにいたヒロと愛佳は亜紗の力に当てられて気絶し、ゆのは腰を抜かして、宮子は「お――」と呟き、カレハは「あらあら」とにこやかな笑顔を浮かべ、唯は状況が分かってないような表情をしています

「ファンネぇっ!」
「はい亜紗さん、そのネタは色々ヤバいからやめてください」

 コレは自分が行くしかないのか……?そうなずなが思った瞬間、奇跡は起きた……数日前、なずな達に剣や武術を教えてくれたKN科二年の一人、土見凛が亜紗を羽交い絞めにし、後ろにいる楓に魔力を止めるように顔を向けます

「もしかして、助かった……の?」
「みたいだね……」
「ねーねー!何が起きたの〜?」

 状況の終息に安堵のため息を吐いたなずなとゆのに、唯は訳が分からない、と言わんばかりの表情で二人に尋ねるのでした


   ひだまりメイドラプソディー 第十八話 身体測定!

 
 そんなこんなで身体測定の日がやってきました

「あれ?友兼先輩に直枝先輩!こんな所で何をしてるんですか?」

 自分達の番をとっとと終わらせる事が出来たなずな達は、寮の食堂で談笑していたME科では珍しい男子の先輩を見かけます
 そしてその二人は、なずなの素直な疑問に、苦虫を噛んだような表情を浮かべます

「いやぁ、ME科は基本女の子のクラスだからねぇ 普段からもそうだけど、こー言う日は特に肩身が狭くて狭くて……」

 友兼のセリフに、なずなは頭に「?」マークを出してしまいます

「身体測定やってる保健室に自分たちが入ると、変態扱いされるからね〜 その二人はKN科の男子と一緒に測定することになってる訳だ」

 そのなずなの疑問に答えたのは、数日前唯のセリフに思いっきりブチ切れてくれた亜紗でした
 身体測定の日、と言う事もあり、亜紗は朝食を食べようとしなかったのですが、杏子・美佐枝と言うひだまり荘の二大料理人に、ヒロ共々無理やり食事を押しこまれました
 閑話休題

「まぁ、それも一応の理由なんだけど……」
「今保健室に入ったら、二人ともメイド服やシスター服を着せられるからですわ♪」
「「わーっ!わーっっ!!わーっっっ!!!」」

 納得したようななずな達の表情に、カレハは色々ぶっちゃけます 友兼と理樹はそんなカレハの口を慌てて塞ごうとしますが、後の祭りとなってしまいます

「そー言えばこの前、ぶち先輩にも色々されてたもんねぇ……」
「う、うん……」
「あは、あはははははは……」

 乃莉の一言になずなは頷きますが、ME科男子女装事件の首謀者の一人の幼なじみである如月は、只引きつった笑いを浮かべることしか出来ません

「うぅ〜〜〜〜〜」

 そんな時、ゆのがうめきながら食堂に入ってきます

「ど、どーしたんですか、ゆのさん!?」
「身長が縮んだ……胸もおっきくなってない……しかも吉野家先生に胸触られた……」

 ゆのの答えに、その場にいたみんなは思わず「うわぁ……」と言いたげな表情になります

「し、身長が縮んだって、どんだけ縮んだんですか?」
「3ミリ……」
「あ、あの……ゆのさん……それって……」

 なずなの質問に対しての答えに、亜紗と理樹は「吉野家先生のセクハラに関して同情して損した……」と言う気持ちになります
 乃莉も「それって単なる誤差とかじゃあ……」と言いたそうな表情になってしまいます

「そ、そー言えば、なずな達はどうだったの?」
「私、身長が2ミリ伸びましたっ♪」
「なずな、だからそれは……っ」

 なずなの答えに乃莉は「それ誤差だって!」と言おうと思いますが、亜紗に「それは言わないで上げて」と言いたそうに肩を叩かれて、それを諦めます

「直枝君、友兼君、女子が終わりましたよ〜」

 なずな達の会話に男二人がちょっと呆れたような苦笑を浮かべたそんな時、数人の女子生徒が食堂に入ってきました

「二人とも、頑張ってねぇ〜♪」
「いやいやいや、身体測定に頑張るも何もないでしょう!」
「保健室にて沢山の男子と桑原先生が……まままぁ♪」
「なんか凄い妄想をしてるけど!」
「先輩達……早く行ってください……」

 亜紗とカレハの言葉に色々ツッコミを入れる理樹と友兼でしたが、如月の一言で複雑な表情をしたまま、食堂を出て行きます

「そう言えば、先輩達はどんな感じだったんですか?」

 そんな二人をスルーして、なずなは同じ料理研究部の二年生達に結果を聞いてみることにします

「私は胸が大きくなったよ」
「私は腰が細くなりました」

 最初に答えた佳澄美と楓の言葉に、その場の空気が凍りついた……乃莉と如月は周りの状況にそんな印象を持ちました
 その原因を探そうと視線を巡らせる……までもありませんでした 椅子からやはり幽鬼の如く立ち上がった亜紗が、凄いオーラを身に纏っていたのです
 ……しかし……

「佳澄美ちゃんも楓ちゃんも酷いよ……」

 最初に口を開いたのは、亜紗では無く、彼女たちのクラスメートであるゆのでした 彼女は凄まじいオーラを出している亜紗に同調するように、涙目で不満を口にします

「そーよね……そーだよね……二人とも大好きな恋人さんに毎日毎日可愛がってもらえてば、胸だっておーきくなるし、ダイエットにもなるもんねぇ……」
「まぁ、亜紗ちゃんったら♪ だったら亜紗ちゃんも楓さんやリンさん達と一緒に凛さんに……」

 この瞬間、完全に嫌な予感を感じたなずなは、乃莉と如月の手を引いて全力疾走で食堂から脱出する事を試してみます
 そして後になずなは同じ料理研究部の小毬と愛佳に語りました……この日程生きた心地はしなかった、と……その二人も、彼女に同意するように、優しく頭を撫でてあげましたが

「そんな事、簡単に出来たらやっとるわ、このバカレハ〜!!!!」

 亜紗のそんな絶叫と共に、激しい爆発音が響きました……
 そしてその危機を何とか回避したなずな達は、一つだけ心に決めました どんな存在にやれと言われても、亜紗の前では絶対体重と恋の話だけはしてやるもんか……!と……

 次回に続く

 あとがき
 とりあえず、現実では遅くても5月にやる身体測定ネタとなりました
 最初に想定してたよりも、かなりカオス展開となってしましたが、後悔はしていません(笑)

inserted by FC2 system