彩井学園は、様々な人材を育成する学校です
 しかしそこに通う生徒たちはかなり個性的すぎる性格の持ち主が多すぎる事で、ある意味有名なのです
 それ故に、新入生がその個性的すぎる生徒達に慣れるには、それなりの時間がかかってしまうのも事実なのです
 だからこそ、その変わり者の話が出てこない……かと思うのは、少々早計です

「の、乃莉ちゃん!あそこに何かある!」

 昼食を中庭で乃莉と一緒に取ろうと思っていたなずなは、草陰の中にある何かを発見してしまいます
 何かと思い、それを確認をしてみると……
 あちこち強打されてて一目ではよく分かりませんが、それは彩井学園の男子生徒だと言うのが分かります

「何が……あったんだろう……」
「さ、さぁ……」

 全身あちこち思いっきり殴られたか蹴られたかのような男の様子に、なずなと乃莉は顔を見合わせ首を傾げます

「あ、朋也!あそこにいたわよ!」
「お、そうかそうか」

 そんな二人の元に、KN科であろう一組の男女が駆け寄ってきます どうやらこのボコボコにされた男の知り合いのようです

「ほら陽平!とっとと起きなさい!」

 そして女子生徒の方は、そう叫ぶと共に、倒れてる男に対して、何と分厚い辞書を投げつけたのです!

「「な、何するんですかぁ―――――!」」
「ん?ああー、こいつ、ボコボコにされるのが好きな奴だから、気にするな」

 女子生徒……KN科三年・藤林杏(きょう)の突然の行動に思わず叫んでしまった二人に、男子生徒……同じくKN科三年・岡崎朋也は満面の笑みでそう答えたのでした



    ひだまりメイドラプソディー 第十五話 変わり者達!



「あんたら、一年に対して無茶苦茶言ってますよねぇ!」

 その直後、一瞬で目が覚めた男……KN科三年春原(すのはら)陽平は、その怒りを朋也と杏にぶつけます

「「ちっ……生きていやがったか……」」
「なんでそー言う事言うんですかぁぁぁぁぁ!!!つか舌打ちはこっそりやるもんですよねぇぇぇぇぇ!!!!」
「ねえなずな……そんな事よりあの人、さっきまでボコボコになってたよねぇ……」
「う、うん……」

 目の前で繰り広げられる応酬に、なずなと乃莉は、自分が持ってる疑問は、もしかしなくてもどうでもいい疑問では無いのか?とすら思ってしまいます

「そ、それより、何でその人、こんな所で倒れてたんですか?」

 なずなが最も大切な疑問を朋也と杏にぶつけると、朋也は鬼のような形相になり、春原の胸元を掴みます

「す―――――――――の――――――――――は―――――――――――らぁ―――――――――――――!」
「ひ、ひぃぃぃぃっぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「そう言えば朋也はまだ殴って無かったわね……」

 朋也の行動に、アハハ……と杏は苦笑いを浮かべてしまいます

「えっとね、こいつが朋也の彼女に手を出した揚句、友達の女の子にまで手を出したのよ」
「ちょ、杏!何嘘を!……すいません」

 杏の状況説明に、春原は悲鳴を上げようとしますが、杏が辞書を振り上げたため、小さくなって震えあがります

「んで、それに気付いたあたしと智代が一緒になってこいつをフルボッコって訳 ホラ、窓が割れてる所があるでしょ?」
「あ、ホントだ……」

 杏の説明に、乃莉はそんな目に合いながらも無事に歩ける春原につい尊敬してしまいますが、なずなはある事に気付きます

「智代って、生徒会の智代先輩ですか!?」
「あぁ、智代の事知ってるんだ〜」
「は、はい……でも智代先輩が暴力なんて……」
「そう?ああ見えて、智代も昔色々あったみたいよ?」

 その杏の「色々」を想像してみますが、なずなの智代に対する「しっかりしたお姉さん」と言うイメージのせいで、失敗してしまいます
 ……その時でした 窓の割れてる場所で、凄まじい叫び声が聞こえてきます

「……智代の奴、厳島(いつくしま)につかまったな……」
「道理で春原の追撃に来なかった訳ね……」
「そ、それより僕……何時になったら解放……すいませんごめんなさい許して」

 朋也と杏の態度に、なずなと乃莉は改めて、宮子が入寮の日に言った「変わり者が多い」と言う言葉に、激しい現実味を覚えたのでした

 その頃窓が割れた部屋……図書室では、智代が風紀委員にてKN科三年の厳島貴子(たかこ)に、正座をさせられていました

「ま、まぁ貴子さん……智代さんも反省してることだし……」
「何を仰いますか、瑞穂(みずほ)さん!智代さんともあろうものが、どんな事情が有れ、窓を割ったのですよ!」
「いや、面目次第も無いです……」

 貴子と一緒にいる風紀委員長にてKN科三年の宮小路(みやのこうじ)瑞穂は、貴子を抑えようとしますが、却って火に油を注ぐ結果となってしまいます

「まぁまぁ貴子さん、それで良いじゃないですか 瑞穂さんの言う通りですわ♪」
「紫苑(しおん)様……しかし……」

 貴子と智代の間に挟まれ、困り果ててる瑞穂にフォローを入れるのは、MC科三年にて前風紀委員長、そして瑞穂の恋人でもある十条紫苑が止めに入ります

「フフ……貴子さん?」
「ハイ、ワカリマシタ、イウトオリニシマス……」
「分かってくれて嬉しいわ♪」
(紫苑さん……心の中じゃ言う通りにしなきゃ殺すって、貴子さんに言ってる気がしますよ……)

 紫苑のオーラに当てられて、腰を抜かす貴子を見て、瑞穂は心の中で溜息を吐くのでした……

「うふふ……ご本は大切にしないといけないの……」

 そんな喧騒の中、春原にナンパをされていたME科三年の女の子・一ノ瀬ことみは、本を抱きしめてうっとりしており、周りの状況には全くもって気付いていなかったのでした

 次回に続く

 あとがき
 とうとう十五話となりましたが……SS内で経った時間は未だに二カ月弱……どんだけのんびりしすぎなんでしょうね(笑)
 それはともかく、友兼兄、理樹に続く第三の男の娘とも言うべき瑞穂登場!……なのは良いのですが……乙女はお姉さまに恋してるに小鳥遊姓が出るんですよねぇ……つまり宮子のオリジナル名字と同じ……
 こんな所で私のいい加減さが出てるような気がしますね
 それにしても、ある程度カオス展開にしてみようと思ってましたが……あんまりカオスじゃ無かったですね……まぁ良いけど

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