ここは剣と魔法が支配するファンタジー世界です 何度も言ってしつこいと思われるでしょうが
しかしもちろんこちらの世界と変わらない部分も少なからずあります
「桜の花が綺麗ねぇ」
そう、彼女……美術部顧問春日野日和の言う通り、この世界にも四季があって、その季節毎に咲く花々が人々を楽しませるのです
その春日野の言葉に、なずなや空が「うんうんと」頷いて同意を示します
彼女達の目の前には、ひらりひらりと散って行く桜の花びら達が舞い、地面に落ちて行きます
そしてその花びらが尽きたその時、春日野はその桜の木の一本に近づいていき……何と、問答無用に蹴りをかましたのです
そして戻ってシートに座った瞬間……
「桜の花が綺麗ねぇ」
「アンタは何がしたいんだ、アンタは」
しみじみと言った春日野の一言に、BS科二年で美術部員の根岸大地は、額に汗を滲ませてツッコミを入れるしかなかったのです
ひだまりメイドラプソディー 第十四話 花見!
「あー、明日の料理研究部の活動は、美術部と一緒に花見をするぞ〜 …………学校でだがな」
そもそもの始まりは、料理研究部の活動が始まって一時間たった時に現れた顧問代理の笹本のこの一言だった
一瞬部員達は互いに顔を合わせて首を傾げた物の、とりあえずは次の日に食べるための料理を作ろうと言う結論に達し、その準備に取り掛かったのです
そんなこんなで準備が出来て、花見の時間になったのですが……
「やっぱり全員が全員参加できる訳じゃないんですね……」
「そうですねぇ、愛佳さんは生徒会のお仕事ですし……」
「楓と佳澄美はデートだしね ……昨日作った料理の一部持ってってさ」
目の前の喧騒を眺めながら、なずなとカレハ・亜紗の上級生コンビがぼやく 約一名、恋人がいない寂しさが少なからずあったりする訳ですが
「三人とも、何こんな所で黄昏てんのや〜 せっかくの花見にそんな表情は似合わへんで〜」
そんな三人に絡んでくるなずなと同じぐらいの大きさの女子生徒が一人 TH科三年にて美術部副部長の芦原ちかこです
その表情はやや赤く染まり、僅かながらお酒を飲んでいることを雄弁に語っています
「ちょ、ちょっと、あーさん!いきなりひっつか……!って、くさいくさい!酒くさい!」
「なんやてぇ!うちはよってへんでぇ!」
「まぁ、お二人とも楽しそうですねぇ♪」
「カレハ先輩、アレは亜紗先輩が絡まれてるだけかと……」
問答無用にボケまくるカレハと、目の前で繰り広げられるアホな応酬、どっちにツッコミを入れるか迷ってるなずなでしたが……
「痛っ!こんなか弱い女殴るなんて酷いわ〜♪ 魚住〜、須尭(すぎょう)〜もっと殴って〜な〜」
「ダメだ、完全に酔ってる……」
「誰か、水渕か大道読んで来い スタンショックで気絶させて一時場外に連れていく」
「アハハ、助かったけど、あんまり酷い事しないでね、二人とも」
そう、芦原と同じ美術部で、どちらも騎士科三年の魚住潤(じゅん)と須尭雨情が軽く芦原を小突き、注意を自分達に引き寄せて亜紗を助けたのです
その二人は芦原の首根っこを捕まえ、亜紗との会話もそこそこに明後日の方向に向かって行ってしまいます
「ボクとしては助かったけど、あーさん大丈夫かなぁ……?」
「それより亜紗先輩……」
なずなの一言に亜紗は、なずなの視線の先に目を持っていくと……
「まままままままままままあ♪」
「駄目だ、完璧に旅立ってってる……」
カレハが頬に手を当て、妙な妄想をしているその瞬間でした
「多分魚住君と須尭君があーさんの取り合いをしてる妄想だと思う……」
「え……芦原先輩って、魚住先輩の彼女だって、この前如月ちゃんが……」
「なずな、一つ良い事を教えてあげる……」
思いっきり混乱してるなずなに、亜紗は優しい顔をしてなずなの肩に手を置きます
「そう……気にしちゃ負けよ!」
「ま、負けですか!?」
「そう、特にカレハの妄想関係に関しては特に!」
「な、成程……」
「お、なずな、花見をしてるのか?」
「あ……!」
亜紗のセリフになずなが納得したそんな時、優しい声がなずなにかかります そう、なずなの憧れの人・律太です
「なんか楽しそうだな」
「じゃ、じゃあ、律太さんも一緒に花見する?」
「いいのか?」
「どうぞどうぞ〜 なずなのお知り合いじゃあ、なずなの弱点とかご教授して貰いたいですし〜♪」
「そ、そんなぁ……」
なずなの言葉を無視し、亜紗は最早酒盛りの場と化している所に律太を招き入れてしまいます
「そう言えば、なずな、それ制服か?」
「は、はい……」
亜紗に差し出された料理を受け取りつつ、律太はなずなの着ている服がなんなのか気付きます
なずなは少し恥ずかしそうに顔を赤らめて、コクコクと頷きます
「うん、結構可愛いと思うぞ 今すぐ俺のメイドになって欲しいぐらいだ」
「そ、そんな……ぁぅあぅ……」
「よしよし、可愛い可愛い」
全身を赤く染めて恥ずかしがるなずなに、律太は小さい子供にするように、頭を撫でて行くのでした
次回に続く
おまけ
笹本「あー……昨日は飲みすぎた……」
宇佐美「笹本先生、大丈夫ですか?」
笹本「ああ、問題無いよ」
宇佐美「一体何でそんなに飲んだんですか?」
笹本「ああ、料理研究部や美術部の連中と花見をしてね……」
宇佐美「花見! お食事ですか!?」
笹本「ああ、そうだが……?」
宇佐美「ずるいです! 私も一緒に食べたかったです!」
笹本「いや、アンタ……ダイエット中じゃあ……」
宇佐美「ハッ!」
おまけも終わり
あとがき
と言う訳で今回は花見となりました 今回は魚住初登場となりましたが……名前の元ネタはある程度分かってくれると思います
そう、某少年誌に掲載されてたバスケ漫画の2Mの人です 流石に漢字を同じにする訳にはいかなかったですがね(笑)