「フフ……フフフフフ……」

 授業が終わり、放課後になった彩井学園高等部TH科二年の教室内の一角で、一人の女生徒が妙な笑いを出していました
 彼女の名前は来ヶ谷(くるがや)唯湖(ゆいこ) この学園で有名なドタバタ集団「リトルバスターズ」の一人であり、普段の彼女は男子より女子にモテるいわゆる「お姉さま」と呼ばれそうな女の子です
 もちろん彼女がこんな笑いを出しているのだから……

「おいくるがや、お前妙な笑いをするな はっきり言ってきしょいぞ」
「おや鈴君 君には分からないかね? 私がとある野望を持って動こうとしているのが」

 そう、来ヶ谷に話しかけた「棗(なつめ)鈴」の言う通り、はっきり言って「きしょい」のです

「そうだ、鈴君 君に頼みたい事がある」
「ヤダ」
「そうか ならば恭介氏を女装させて学園内を練り歩かせるぞ〜 今まで以上にきしょいと思うが、どうかな?」

 あっさり断った鈴に、リトルバスターズのリーダー兼鈴の兄である「棗恭介」の名を使い従わせようとしたのですが……

「そんな事しなくてもあいつは最悪にきしょいわぁ――――――!」
「…………そうか」

 鈴の一言に流石の来ヶ谷も、そう返すしか方法は無い 無論心の中では僅かながら恭介に対する同情心があったりします(笑)

「姉御姉御!あたしなら手伝いますヨ!」
「内容次第ですので、とりあえずどんなのかお話しください」
「おお……き、君達は……」

 言いたい事を言ってあっさり帰って行った鈴を見送った来ヶ谷に二人の女生徒が話しかけます
 来ヶ谷はその二人に思わず心から感謝の念を送りたい、と後に語っていた……


    ひだまりメイドラプソディー 第十話 女装!
 


 それと同時期、なずな達もこれから部活に行こうとしていました

「ねぇ、なずな!今日は何を作るの〜?」
「えっと……小毬先輩が作りたいお菓子があるって言ってたけど……」
「へぇ……なずなが作ったの、食べてみていいかな?」
「私も私も!今じゃなくてもいいけどさぁ〜」
「私も食べたい……」
「うん……自信ないけど……」

 こんな感じで仲良く進んでいましたが、美術室につこうとしたその瞬間……

「う、うぉぉ!あ、兄貴!ど、どーしたんだ兄貴!」

 とこんな感じの叫び声が聞こえてきました

「今の声、友兼さん、ですよね?」
「うん!絶対友兼だった!」

 友兼の叫び声が気にならない訳もなく、皆美術室に入ってみると……

「じゃあ三枝(さいぐさ)さん、西園さん、友兼君をお願いね〜 成功したら直枝君共々見せてね〜♪」
「み、みみみみみみみみみっちゃん!友兼先輩に何やったんですかぁ――――――!しかもそんなに楽しそうに!」
「あら、如ちゃん、そんな絶叫を上げて楽しいの?」

 そこには先ほど来ヶ谷に話しかけていた二人の女生徒・三枝葉留佳と西園美魚(みお)が、気絶している友兼の兄剛を今まさにどこかに連れて行こうとしているところでした

「今ね、友兼君と直枝君に女装させようと来ヶ谷さんが企んでたの で、私も微力ながらスタンショックの魔法でお手伝い……」
「瞬間気絶魔法じゃないですかぁ――――!」
「成程!気絶させて女装させればよかったのか!俺、気付かなかったぜ!」
「友兼さんも何言ってるんですかぁ―――――!」

 周りの状況に、如月が思わず叫んでしまいます なずなや空は最早急展開に脳の処理が間に合わず、只オロオロするしか方法はありません

「あ、な〜ちゃんここにいた〜 さっき唯ちゃんが理樹君と友兼君を女装させるって言ってたから見に行こうよ〜」
「こ、小毬先輩……もう何が何だか……」
「ん〜〜?だからぁ、理樹君と友兼君を女装させるんだって〜♪」


 結局なずなと如月は何が何だか分からないまま、水渕と小毬と友兼によって別室に連れてこられてしまったのです
 そこにはメイド服を着て気絶している二人の女生徒……に見える男子生徒が二人 言わずもがな直枝理樹と友兼剛である

「女装した直枝さん×友兼さん……これは意外とアリですね」
「美魚ちんの言いたいことはよく分からんスけど、これは結構面白いですネ♪」
「葉留佳君、美魚君、協力感謝する!」
「ねえねえ唯ちゃん、次は何をするの〜?」
「……楽しそうだね」
「……そうですねぇ……」

 リトルバスターズメンバー+αの面々に、なずなと如月は彼女たちについていけない、と思わざるを得なくなってしまいます
 その時でした

「くぅーるぅーがぁーやぁー!」
「おぉ、鈴君ではないか」
「理樹に何やったぁ―――――!」

 唐突に表れた鈴は叫びとともに、来ヶ谷に最大の特技ハイキックをかまそうとする……が

「はぁっはっはっはっは〜〜〜〜!」
「ううっううう〜〜〜ううう〜〜」

 来ヶ谷はそれを予想してたかの如く、そのハイキックをあっさりと受け止める

「もうりんちゃん〜!ゆいちゃん相手でもあんまり暴力はダメだよ〜」
「小毬ちゃんは黙っててくれ!理樹に酷いことする奴は天罰を与えなきゃ駄目だ!小毬ちゃんは理樹と来ヶ谷、どっちが大事なんだ!」
「うっ!ゆいちゃんより理樹君の方が確かに大事だけど……でもでも……」

 徐々にカオスとなっていく教室の中、とりあえずなずなと如月は結局女装させられた男子生徒二人を起こすべきという結論に達し、二人に近づいていきます
 その行動が功を奏し、二人はとうとう目を覚まします

「おぉ、理樹君 目が覚めたか?」
「覚めたけど来ヶ谷さん、僕はなんでメイド服を着せられてるの?」
「ゆいちゃんが理樹君のメイド姿を見たかったんだって〜 おかげでいいもの見れました〜♪」
「うぅ……小毬さんまで妙な趣味に目覚めた……酷いよ、来ヶ谷さん」

 小毬の答えに理樹は思わず涙目になる すると……

「ゆ、ゆ、ゆ、ゆいちゃん!理樹君を困らせることしたらダメだよ!」
「小毬ちゃん、さっきまでと言ってることが違うと思うぞ」

 鈴の一言に思わずなずなと如月は「うんうん」と頷いてしまったのですが……

「こまりくんにきらわれた……りきくんだけでなくこまりくんにまで……」

 小毬の一言にショックを受けたのか、来ヶ谷は教室の片隅に行き、体育座りになってぶつぶつと喋りはじめる

「……なんか、変な人ですね〜」
「き、如月ちゃん、ちょっと失礼だよ〜 気持ちはわかるけど……」
「へんなひとっていわれた……」
「きしょいわボケぇ―――!」
「りんくんにまできしょいといわれた……しかもぼけとまでいわれた……」
「あ、あの、来ヶ谷さん?僕はあんまり気にしてないから!ねえ、友兼」
「そ、そうだよ、来ヶ谷さん、ねえ?」
「兄貴、とりあえず着替えたら?」

 教室内のカオス化がさらに続いていく教室内、なずなと如月はどうしようかと悩んだのですが……

「部活、行きましょうか」
「そうだね……」

 結局二人が選んだのは「部活に逃げる」という選択肢でした

 次回に続く

 あとがき
 今回はREDさんの友兼兄の女装と言うリクエストを頼まれたので、やや番外編的な扱いとなりました
 展開としては友兼兄は目立ってないし、主人公のなずなもあんまり活躍せず……(笑) しかも主犯とも言える来ヶ谷さんも妙な性格にしてしまい……(笑)
 こんな展開になってしまい、REDさん申し分かりませんでした(苦笑)

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