とうとうなずな達にとって彩井学園における初授業が始まる日となりました

「「うぅ〜〜〜〜」」
「なずなちゃんも空ちゃんもとりあえず落ち着きましょう」

 体験入学ではなく、本格的な授業がこれから始まると言う事で、なずなと空は緊張でガチガチに固まっています ……朝のHRも始まってはいないのですが
 唯一緊張をしていないっぽい如月が二人をなだめようとしますが、功を奏する様子も無く、刻一刻とその時がやってこようとしています

「如月ちゃん……担任の先生、怖い人だったら嫌……」
「え、担任の先生に関する緊張だったんですか!?」

 いつの間にか教科書を頭に載せた空の一言に、なずなと如月は流石に吃驚してしまいます

「もう、空ちゃん!担任の先生は始業式の時に会ったじゃないですか!宇佐美先生って言う優しそうな先生ですよ!」
「あ……そーだった……」

 如月の言葉に、空は今思い出しました、と言う表情になり、その表情になずなと如月は、きょとん……とした表情の後、思わず吹き出してしまいます
 そんな二人の態度に、空も思わず笑ってしまいます
 その時教室の戸が開き、一人の女性が入ってきます その女性も緊張した面持ちで教壇に向かっていきます
 そして黒板に自分の名前……宇佐美真由実と書いた後、生徒達に向かって……

「あ、改めまして……このクラスの担任となるうさめ……いたたたたた」

 自己紹介をしようとしたその瞬間舌を噛む、と言うある意味暴挙に訴えたのです


 ひだまりメイドラプソディー!! 第六話 初授業!


「宇佐美先生だったら、私たちの初授業の時もそんな感じだったんだよ〜」

 昼休み、なずな達三人はゆのや宮子と一緒に昼食を取ることにしましたが、話題は当然朝の担任・宇佐美のミスだったりします

「宇佐美先生、よっぽど緊張してたんだろうね〜」
「でも宇佐美先生、始業式の時はあんまり緊張して無かったような気がするんですけど……」
「なずなちんの疑問はもっともだよ!だけどなずなちん!始業式と初授業、どっちが緊張したかな〜?」
「あ、そーでした」
「あ、いたいた〜♪」

 楽しくお喋りしてる時に、乃莉と奈三子がなずな達の所にやってきました

「乃莉ちゃん!」
「ヤッホー♪ 初授業、どうだった?」
「うん、何とかこなせたけど……」
「……?どうかしたの?」

 なずな達ME科三人の態度に、乃莉と奈三子は顔を見合わせて首をかしげます

「もしかして、吉野家先生?」
「はい……」

 三人の態度の理由に、ゆのは自分のクラスの担任の顔を思い浮かべます
 普段は温厚で優しい女性教師である吉野家先生は、たまに変わった格好をして生徒を驚かし、校長に叱られる、と言う事が少なくないのです
 事実なずな達の裁縫の初授業の時に現れた吉野家先生は、日本の大晦日の某番組に出てくる某人物が着るようなド派手な衣装に身を包んでいたのです

「乃莉ちゃんと奈三子さんは?」
「礼儀作法と素振り千回、それにグラウンドのトラック十周走らされた!」
「へぇ……私たちはトラック二十周だったよね〜」
「はい……あれは疲れました……」

 乃莉の答えに、なずなと如月は空からお茶のお代わりを受け取りながらゲンナリとした表情になります

「野田ちゃんやキョージュさん達は何をやったんでしょうねぇ」
「さっき会った野田と友兼はひたすら解錠の練習をさせられた、って話してたぞ」
「そー言えばさっきキョージュに会ったけど、瞑想をした後、魔法による基本的な攻撃と治癒を勉強した〜、って言ってたよ〜」
「なんかキョージュさんだと瞑想する場面が想像しやすいね……」
「慣れると正座をしながら眠ってたり……?」

 奈三子の言葉に、如月は失礼だと思いながら「うがぁ――!もうやってられませんよぉ〜〜〜〜!」と半泣きになる野田の様子を思い浮かべてしまいます
 それと同時に友兼が力技で何とかしようとする様子も思い浮かべてしまいます
 乃莉の言葉には、雅が正座をして目をつむる姿を皆で想像してしまいます 空はさらにそこから雅が眠っている、と言う想像までしています

「そういえば、うちのクラスに男子が二人いるんだけど……」
「あぁ、片方はこの前ラクリマにカマボコ上げてた……」
「うん、直枝理樹君!それで、その理樹君ともう一人の男子なんだけど……」

 会話が一段落したと思ったゆのは、とたんに夏に怪談をするような態度になります
 しかしメイド科の内なずなと如月はオチが読めてしまい、噴き出してしまいそうになってしまいます

「半年ぐらい前だったかなぁ?外見が女の子っぽい〜!って理由で吉野家先生にメイド服を着せられたことがあったんだよねぇ……」
「それは……キツいですね……」

 ゆのの説明に乃莉の脳裏に浮かんだのは、入寮の日に会ったやや女性的な顔をしている先輩がメイド服を着せられてるシーンだったりします
 そんなこんなでお話してるとチャイムが鳴り、もう少しで午後の授業が始まる事を教えます

「んじゃ、あたしはそろそろ失礼しますよ〜!」

 そのチャイムで、宮子はシュタっと立ち上がり全力疾走で駆け抜けて行きます

「それじゃあ、皆も午後頑張ってね」
『はい!』

 宮子を見送ったゆのは、なずな達に向き直って笑顔で応援し、自分の教室に駈け出して行きます

「よし……午後も頑張ろう!」
『おー!』

 そして、乃莉の掛け声と共に残った皆は走り始めました

 次回に続く

 あとがき
 とうとう初授業編となりました 宇佐美先生も出したくなったので、吉野家先生の出番が思いっきり少なくなってます(笑)
 吉野家先生によってメイド服を着せられたゆののクラスメートの男子は……GAに出てくる病弱ゲーマー兄貴の事です 多分予想できたことだとは思いますけどね

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