そして入学式の日がやってきました
 この日から彩井学園の受験に合格した者は正式にこの学園の生徒となれるのです
 そしてこれから入学式に挑む(と言うほどのものでもないが)少女達は、お互いの学科の制服の見せ合いっこなるものをしていました

「わ〜♪ 如月ちゃんもなずなちゃんも空ちゃん可愛い〜♪」
「可愛いのは同感だが、あたしはやっぱ似合わないなぁ〜……所々のヒラヒラが駄目だ MEじゃなくてKNを選んで正解だった……」
「そうだろうか?機会があれば着て見ればいいだろう?」
「そりゃあそうだけどさぁ……」

 ME科……メイド・執事育成科に入学する3人の少女を、4人もの少女が囲む……それだけの筈なのに、とたんに騒がしくなっています
 メイドを育成する、と言う理由だけで、なずな達ME科はは黒を基調としたワンピースの上に、所々にフリルをあしらったエプロンを着る、と言うオーソドックスなメイド服を着ています

「奈三子さんに乃莉ちゃんもその制服、似合ってますよ〜♪」
「うん!似合ってる似合ってる〜♪」
「似合ってる……」
「あ、あはは……そう言ってもらえると嬉しいよ」
「でも奈三子さん……コレってあの帽子が付いたらいわゆる……ねぇ?」

 今まで褒められてた側が、今度は褒める側に移りだす ほめられた二人……乃莉と奈三子の着ている制服は、紺を基調としたワンピースのスカートをやや変化させた制服……いわゆる教会のシスターが着るようなものでした


  ひだまりメイドラプソディー!! 第五話 入学式!


 そして入学式が無事終わり、なずなと乃莉は自分の部屋に戻りました

「いや〜この学園って、生徒も凄いけど、教師の皆さんも変な人が多いですねぇ〜」

 部屋に入るなり、乃莉は一言こう感想を述べます するとルームメイトのゆのと宮子はそれに同意するように激しく頷きます

「まず校長先生でしょ!? あの頭!あたしも一年前初めて見た時吃驚したよ!」
「宮子先輩もそう思いますか!? 言ってる事がマトモなだけにアレは吃驚ですよ!」
「教頭先生も凄いでしょ! 言う事の一から十まですべてが『うむ』の一言だけで済ませるんだから!」
「言ってました!『うむ』って言ってました!」
「そういえば途中で女の先生が乱入しなかった?」
「はい!乱入してました! 着てる服もなんか派手で凄かったです!」

 乃莉と宮子の会話を聞きながら、なずなも入学式の時を思い返していた

 宮子の言う通り、校長先生(名称不明)は顔が縦に長くなっており、さらに声の大きさでマイクから変な音が聞こえていた為、隣にいた空は校長先生の話の間はビクビク怯えていました
 校長先生の次に来た教頭先生ロア・ジン・クランクハイトは、壇上に立つと、只一言「うむ」と言う言葉を発しただけで壇上を下りて行きました 空とは逆隣りにいた如月は眼を丸くして固まっていました
 そしてその後、この聖地を治める優しそうなお婆さん・イヴェル・エアル・ロシュフォルンが現れる前に何故かこの彩井学校の一教師である吉野家と呼ばれた人が乱入してくるなど、終始ドタバタが絶えなかった印象がなずなにも尽きませんでした


 そんなこんなでなずなにとっては、あっという間に終わった筈の入学式も、気持ち的に少しだけ疲れてしまっていました

「あ、そーだ!なずな、教科書買った〜?」
「うん、大丈夫……だと思う」
「んじゃ、見せあいっこ、してみる?」
「うん!」

 乃莉の言葉に、なずなは先ほど買った教科書を乃莉に渡します

「ふぅ〜ん 家庭科は当然として、礼儀作法はMEもあるんだ〜……中は……うっわ、KNよりもなんか難しそうだね〜」
「そうだよ、乃莉ちゃん MEを一年やってる身としては、礼儀作法は厳しくしつけられてるのですよ〜 でもKNとMEってそんなに変わりなさそうだけど……ちがうんだね〜」
「ええ、買ったときにちょっと礼儀作法のを読んでみましたけど、MEのに比べたらなんかちょっと簡単そうですね〜」
「へ〜 私もKNの礼儀作法はMEとあんまり変わんないと思ってた……」
「うん、私もそう思ってたんだけど〜 その分戦術理論とか、武術とかをやらされるんだと思う〜」
「あ、ホントだ〜 なんか凄く難しそう……」

 乃莉の言葉に、他の三人は戦術理論の教科書を覗くと、古今の基本的な戦闘技術や戦略の知識をぎっしり詰まってる教科書に、思わずうなってしまいます

「そういえば、宮子先輩、TH科はどんな授業をするんですか?」
「ん? えっとね〜……ん〜〜〜〜〜 授業中は寝てて忘れちった♪」
「忘れちったって……実技とかもあるんでしょう?」
「あ、そーだね〜 実技は鍵のかかった宝箱の開け方……とか?」
「……それって、泥棒にも使えるんじゃあ……」

 宮子の説明に、なずなと乃莉は笑顔で空き巣に入っていく宮子の姿がリアルに想像されていきます

「もちろん普通に使っちゃ駄目だよ〜 それに家に使ってる鍵よりも宝箱の鍵の方が難しいって、実技の幸村先生が言ってたよ〜」
「えぇ!? あの幸村先生が!?」

 宮子の追加説明に、ゆのは思わず叫んでしまいます
 なずなと乃莉は「幸村先生」なる人物がどんな人か一瞬分かりませんでしたが、顔と名前が一致したその瞬間に「えええ〜〜〜〜〜」と叫び声をあげてしまいます
 それもそのはず幸村先生は外見だけを見れば髭を生やした温厚そうな老紳士だからです
 しかしその実幸村先生は、TH科の他に、ME科、BS科、KN科の基礎技術をマルチに教えるスーパー教師だったりするのです
 宮子の説明に、一年生二人は最初の幸村の授業は真剣に聞いてみよう……と小さく決意をするのでした

「あ、そうだ!そろそろご飯にしよ!」
「食堂、開いてないですよね……私作ります〜」
「なずなちゃん、一緒に作ろ〜♪」

 そしてそんなこんなで入学式の日は終わりを告げたのでした……

 次回に続く

 あとがき
 何だかんだととうとう入学式になりました ……まぁ本番の描写は少なかったですが
 にしても幸村の爺さんの扱いは凄すぎたかな〜 亀の甲より年の功って言うしな……と言い訳してみたり

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