何度も言う必要は無いと思うが、このお話の世界は現実的なものではなく、剣と魔法が活躍するファンタジーです
 街で無い所に、スライムやゴブリンが現れ、洞窟に財宝がある以上、人間の言葉を理解し、またそれを喋る猫の一匹や二匹、いてもおかしくないのです

「まったく……ボクの第一印象が『可愛い』からって、全力全開で問答無用に抱きしめるのはいただけないと思うんだよね……」
「はい……ごめんなさい……」

 彩井(あやのい)学園学生寮の一つ「ひだまり荘」の食堂で、つい十分前まで抱きしめられていた猫は、その相手「山口如月」に説教をしていました

「あ、あの……」

 その説教に水を差すように、なずなは猫に話しかけます

「この色紙に、猫さんのサインおねがいします!」
「なずなぁっ!妙なタイミングで妙なボケ禁止ィィィィイイイイィィイィィィィィ!」

 なずなのセリフと行動に、乃莉は思わず絶叫していました(笑)


  ひだまりメイドラプソディー!! 第二話 素猫!


「彩井学園は妙な人が多いのは知ってるけど……サインを求められたのは初めてだよ」
「そうなんですか?」
「うん ホラ、ボクって鉛筆とか持てないでしょ?だからそこん所は一応皆分かっててくれてるみたいで」
「あ……そうでした……」

 猫の一言になずなは恥ずかしさから真っ赤になってしまいます

「まぁ、二人ともわざとやった訳じゃないみたいだし、これ以上文句をいってもしょうがない……よね?」
「フフ、そうねぇ それより三人に自己紹介してあげたら?」

 ヒロの言葉に、猫は思わず「しまった!」と言いたそうな表情になります その表情も思わず「可愛い」と思ってしまう一年生たちだったりします

「ボクの名前はラクリマ 素猫って呼ばれる風の妖精の一種だよ!ここの管理人さんに飼われてるんだ!」
「妖精さんだったのですか……私、エルフ以外の妖精なんて初めて見ました!サインじゃなくても、手形の一つも欲しくなりますねぇ」
「そうだよねぇ 可愛いし、抱っこして散歩とかもすると、楽しそうだよね〜」
「フフっ なずなちゃんも如月ちゃんも、嬉しそうね」
「でも分かるなぁ ラクリマと一緒に外で寝ると、すっごく気持ちいいんだよねぇ」
「そういえば宮ちゃん、屋上でこの前そんな事やってたよね……」
「ちょっといいかな?」

 その時、女の子と間違えそうな男の子が、筋肉質な大男と共に現れました

「あ!理樹に真人だ!どうしたの?」
「うん、鈴に頼まれてね コレをラクリマにって」

 小さい男の子の方……直枝理樹は、手に持ってた物を差し出します
 それはカマボコで、それを見た瞬間、ラクリマの目が見開いてテーブルの上から一気に理樹に駆け寄っていき、カマボコを貪り尽くさんばかりに食べ始めます

「ホラ、そんなに急ぐと喉に詰まらせるよ?ちぎってあげるから、もっとゆっくり食べなきゃ」
「う、うん……」

 理樹にちぎったカマボコを差しだされ、真っ赤になりながらラクリマはそれを口にします

「それよりお前ら、一年か?そっちの二人はMEか?」
「はい、そうですけど?」

 理樹とラクリマの様子を一歩離れた場所で見ていた、大男……井ノ原真人は、ラクリマで遊んでいた如月達に話しかけてきます

「あいつ……理樹もMEだ 困ったことがあれば、あいつに聞けばいい」
「え……あの人って、MEなんですか?だって……」
「あのなぁ、MEは執事育成科でも有るんだぜ?」
「あ、そうでした♪」
「まぁ、理樹ならメイド服も似合いそうだけどな」

 真人の言葉に、なずな達は理樹のメイド服姿を想像します

「真人、一年生に何変な事を教えようとしてるの?」
「ゲッ!バレた!」

 思わずなずな達が「似合いそう……」と思った瞬間、その理樹が現れます その怒ったような表情から、さっきまでの会話を丸ごと聞かれたようです

「全く真人は……理樹も苦労するね〜 真人のほかに恭介とか葉琉佳とか鈴の相手しなきゃ駄目なんだから……」
「でも自分でやってるから それに結構楽しいよ?それじゃ、真人を追わなきゃ駄目だから、またね〜」

 そう言って、唐突に表れた二人は、風のように去って行きました

「なんか変わった人達ですね〜」
「なずなもそう思う? でもあの二人で驚いてたら身が持たないよ? 『リトルバスターズ』は、あの程度じゃないんだから」
「「「リトルバスターズ?」」」
「そうよ〜 TH科三年の棗恭介って人を中心に、色々変わり者ぞろいだって話よ?」
「この前なんか、校内で缶ケリやってて風紀委員に注意されてたよね〜」
(((校内で缶ケリ!?どれだけ凄い人達なの!?)))

 ヒロ達の話に、なずなたちはこの学校の凄さを思い知ったのです

(私、この学校でやっていけるのかなぁ……)
「な〜ずな♪」
「ひゃぁ!?」

 彩井学園の凄さに圧倒され、不安になったなずなでしたが、後ろから乃莉に抱きつかれて思わず可愛らしい悲鳴を上げてしまいます

「どーしたの?そんな顔しちゃって……」
「だって……体験入学じゃあ、ここまで凄い所だと思わなくって……」
「だ〜いじょうぶだよっ!」
「え?」

 今にも泣き出してしまいそうななずなを、乃莉は安心させるように元気な声を上げます

「困った時は、私が助けてあげる!今日会った先輩達も何だかんだで優しそうだったしね♪ それに井ノ原先輩だって言ってたじゃん?」
「え?」
「困った時は直枝先輩に言えばいいって!私じゃ無理だったら、ヒロ先輩やゆの先輩や如月達だっているんだから……ね?」
「乃莉ちゃん……ありがとう……!」
「え!?べ、べつにお礼を言われるほどじゃないからね!うん!」

 なずなにお礼を言われて、思わずどもる乃莉に、先輩三人と如月は思わず「乃莉ちゃんかーわいい♪」などと思うのでした

 次回に続く

 あとがき
 なずなクロスSS第二話如何でしたでしょうか? 今回は素猫ラクリマと、変わり者ぞろいで有名な「リトルバスターズ」から、理樹と真人が初登場です
 ラクリマは一人称「ボク」ですが、一応女の子です いわゆるボクっ娘と言う奴です 名前はアトラスのゲーム「レブス」の主人公からです 性格は全然違うんですけどね

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