フィーナ・ファム・アーシュライト 彼女は月にある国・スフィアのお姫様であり、次期女王として名高い17歳の女の子である
 その身分でありながら、クレメンティス家のメイドを一人連れて地球に留学するなど、その行動力は他の王侯貴族ではあまり真似のできない行動力を誇っており、王としての才覚は名君と呼ばれていた母のセフィリアを遥かに凌駕しているという噂もあったりする
 しかし、その立場から友達はいないも当然だったものの、地球に留学してからは、たくさんの友達に囲まれて楽しく過ごしている


 お姫様の暴走学園生活 プロローグ後編


「フィーナ姫自らお茶菓子を持ってきてくれるとは、末代まで語り継ぎたいぐらいだな」
「あら、ここにいる私は、スフィアの姫であると同時にあなたのお友達よ? これぐらいのもてなし、自分で出来なきゃ恥ずかしいわ ……まぁ、お菓子は自分で作った訳じゃないけど」

 隆史の冗談にフィーナは思わず苦笑を浮かべてしまう 彼女が地球に留学してから半年と経っていないが、その会話の内容は長年付き合ってきた親友の内容である

「それで、達哉……そこにいるおっさんはそろそろ解放してあげれば?さやかさんに会わせるつもりなんでしょうけど、猿轡ぐらい外してあげないと いい加減死んじゃうかも」
「そーだね ……今の今まで素で忘れていたよ カレンさん、頼むよ」

 隆史の言葉に、本当に今まで忘れていたと言わんばかりの表情で自身の父親である男に視線を浮かべ、その見張りを頼んでいた女性……カレン・グラヴィウスに解放をお願いする

「息子よ……父は悲しいぞ 左門はおまえにどんな教育をしているんだ……」

 うっうっとあからさまに嘘泣きをする男は達哉の父親の朝霧千春と言い、考古学者をやっていて世界中を飛び回っており、数日前までは「太陽系の外に住んでいる宇宙人に誘拐されていた」らしい

「仕事して生活費稼いでくれるのは嬉しいけど……部屋の掃除もしてくれ この前いろいろあって部屋にミサイルブチこむ羽目になったけどな」

 同じ男としては尊敬しているものの、父親としてはちょっとどーかなーなどと思っている達哉の言葉に、隆史は苦笑いを浮かべ、フィーナとミアは封印していた過去を思い出して少し震えてしまう

「それで達哉 体の方は問題ないの?」
「あぁ、特にひどい問題はないって 明日までにはもう退院だってさ」

 隆史の一言で微妙になりかけていた空気がしっかりしたものに貼り変る 変人こそいない物の、一癖も二癖も多いクラスメイトに囲まれている為、隆史や達哉は自然とまとめ役的ポジションにつくことが多かったりするのだ

「皆、菓子を食べながらでいいから聞いて欲しい」

 そんな中、真面目な声がその場に浸透する ライオネスの声である

「とりあえず達哉君がフィーナの婚約者として決まったわけだが、それ以外の事はいまだ決まっていない よって今月までとしていたフィーナの留学期間を達哉君が高校を卒業するまでに変更とする」
「お父様、それは……!」
「フィーナよ お前に婚約者が出来たと言ってもすぐに王位をおまえに譲るわけではない そこは分かってるね?」

 声そのものは優しいものの、有無を言わさぬ表情で見られ、フィーナは何も言えなくなる 王としての経験の差だと隆史は感じたが、とりあえず横やりを入れることはない

「千春やフィーナ達から聞いたが、フィーナに会う前の達哉君の進路は月に留学を視野に入れていたのだね?」
「はい 月の事は前々から興味がありましたから そちらが良ければ、そうして欲しいのですが……」
「こちらとしてはそうしてもらわねば困るな 次期女王の夫となる男には色々月の事についてもっと知ってもらわねば困る」

 達哉の言葉に満足したライオネスは、娘の友達にも会えたし色々やらねばならないことも多いとカレンを伴って部屋を出てしまう

「すっごいねー、フィーナのお父さんって!何かそこで縛られている人と大違い!」

 それを確認するやいなや、緊張から解放されたのかあさみが興奮したように騒ぎ出す

「ともかく、オヤジさんからの許可も貰ったし、フィーナ、これを見てくれ」

 興奮して騒ぐ姪を横目に、隆史は一枚の紙をフィーナに差し出す

「文化祭? コレ、何をするの?」
「まぁ、学校でちょっとしたお祭りをやるのさ クラスや部活毎に出し物を決めてね ちなみにうちのクラスは模擬喫茶店をやることになったんだ」
「ふぅ……ん それでその詳しい内容は?」
「女子は全員メイドコス 最初は男もその予定だったんだけどね〜」
「どういう事?」
「佐藤や雨情あたりのメイド姿を想像すれば大体理解できるだろ?隆史や俺当たりだったらまだ許せる範囲なんだろうけどな」

 恋人の言葉に思わず梅干しを食べたような表情になってしまうフィーナ どうやら嫌な想像をしてしまったようである

「でもフィーナさんのメイド姿ですか〜 フィーナさん美人だからメイド服も凄く似会いそう!お客さんも凄く多くなりそう!」
「あさみとしては兄ちゃんのメイド姿もちょっと興味あったんだけどね〜♪」
「ミアも学園祭には来てくれよ」
「は、はい!私でよろしければ!」
「ともかく俺をそろそろ解放してくれないか?」

 千春の言葉はお喋りに夢中になっている隆史達には届かず、フィーナは初めて体験する「学園祭」に思いをはせながら、笑顔で恋人やその友達との会話に夢中になるので会った

次回に続く

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