「谷崎先生……テストは出来ましたか?」
「え そ、それは……」
テストまであと一週間を切ったある日の夜 英語教師谷崎ゆかりは校長命令で缶詰状態にさせられていた
理由は至極簡単である テストで使う問題用紙をゆかり只一人が提出していなかったからである
「まぁ良いでしょう とりあえず茶道部の高嶺君と言う子が食べ物を作っていたので、幾つか分けてもらいました いただきましょう」
「は、ハイ!ありがとうございます!」
こー言う厳しい状態でこそ、人の優しさが身にしみる物である ゆかりはちょっとだけ泣きたくなる気持ちになりながらもその食べ物に箸をつけることに
「食後のデザートは同じ茶道部の桜井さんと言う子が作ったシュークリームです 茶道部だと言うのにシュークリームと言うのも多少変な話かもしれませんが……」
「い、いえ!今は食べれれば何でも良いです!」
校長の言葉に、ゆかりはビシッと敬礼を返して、再び食事を再開する
もちろん食事が終わったからってゆかりが解放されるわけではない テスト用紙が完成するまでゆかりは解放してもらえないのである
(う……うぅ……テストなんて……テストなんてぇ……!)
涙目になりつつゆかりは心の奥底から思う
(テストなんて嫌いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)
はたしてそれは、彼女が学生のころから思っていた事であった
お姫様の暴走学園生活 期末テスト 準備教師サイド
「それでゆかり?テストは出来たの?」
「なんとかね〜」
次の日の朝、ゆかり以外の教職員が見たのは、精根尽き果てて真っ白に燃え尽きたゆかりの姿だった
みかやふゆきあたりは、そのゆかりの姿に慌てふためいたものの、他の大半の教師はその近くにいた校長の姿ですべてを理解してしまっていた
「ともかく、次忙しくなるのはテストが終わった後の採点だね あたしとしてはそっちの方が大変だよ」
「……俺に採点を任せておきながら、お前は何を言ってるんだ?」
あっはっは!とバカ笑いしているヨーティアの隣でボソリとグェド・ギンが思わずつぶやく
そのさらに隣にたまたまいたジジィが慰めるように彼の肩を叩いていたが
「でも採点って本当に大変なんですよねぇ……教師になるまでこの仕事が大変だなんて私、思いませんでした」
みかの言葉に思わず大半の教師が同意するように頷く ……頷いてしまう
「あっはっはっは!みなさん、何沈んだ顔をしてるんですか!」
そんな沈んだ空気の中、教師の中で最も空気の読まない(であろう)男早乙女が現れる
「早乙女君は良いよねぇ……君さぁ、悩みなんてないでしょ?」
「悩み以前に昨日の事を覚えているかどうかも激しく疑問だね」
五十嵐の羨ましそうな言葉に対しての、春日野が思わず言った一言に、大半の教師は「それ言わないお約束なんじゃあ……」と思う前に「やっぱりそうなのか……?」と思ってしまう
「やだなぁ!五十嵐先生も春日野先生も!俺にも悩みの一つや二つ、あるにきまってるじゃないですか!」
「へぇ、意外ね!どんな悩みなの?」
「そうですね……たとえば……」
その言葉の後、早乙女は石のように固まってしまう どうやらその「悩みの一つや二つ」は無かったようである
「た、たとえば、もうちょっとでクリスマスだし、彼女の一人も欲しいな、とか……」
「取り繕っても遅いですよ、早乙女先輩……」
「ラクス君、早乙女君に言っても無駄だよ」
「みなさん」
皆でバカな事で騒いでいる中、校長の一言がその場の空気をしっかりしたものに変える
「今回のテストが終わり、返却も終わればもう少しで冬休みです 今回のテストで赤点を取る人も取らなかった人も、そして教師の皆さんも充実した冬休みにするための努力の喚起をお願いします」
校長の言葉に、教師一同が「はい!」と完全にユニゾンする
「それでは解散してください」
「はい!」
校長は教員たちの返事と共に、校長室に下がっていく
「にゃも〜〜〜〜〜〜」
「なぁに?」
それを確認したゆかりは隣にいる相棒に声をかける
「暫く寝るから保健室まで連れてってぇ〜〜〜〜〜〜〜」
「それは良いけど、後ろにいる校長先生を何とかしてからにしてね」
「…………え?」
「たぁ――――にぃ――――ざぁ――――きぃ―――――せぇ――――ん――――せぇ――――いぃ――――!」
怒りのオーラを全身にみなぎらせた校長が、いつのまにかゆかりの後ろにいたのである
ゆかりは他の教師に助けを求めるように他の方に視線を向けるが、皆今の校長に何か言う物ならなんか凄い事になりそうなのでそそくさと逃げて行ってしまう
「さぁ、谷崎先生!観念してください!」
「はい……」
校長の言葉に、真面目に観念したようにゆかりはその場にへたり込む
ゆかりに対する校長の説教はそれから数十分に及んで続いていた そのせいかどうか……その日のゆかりの授業はすべて自習になりましたとさ
次回に続く
あとがき
中間テスト同様、またもや教師編です
なんか校長を凄い扱いにしてますね ここまで来ると彼はバケモノなんじゃないか……?と思う所もありますが、まぁいっか(苦笑)