「竹田よぉ……お前、期末の勉強ちゃんとやってんのか?」
「は?何言ってんだよ ここ数日中間の補修とナンパに忙しくってさぁ……」
「え……」

 期末テストまで一週間を切った日の放課後、隆史はナンパなクラスメイトが心配になり、とりあえず聞いてみたが予想通りすぎる返答に、一瞬返す言葉を忘れてしまっていた

「お前……大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫」

 隆史自身、真面目な人間ではない、と自負しているが、彼の言葉に思わずこのままほおっておいて冬休みも補修付けにした方がこの男の為になるんじゃ……と思ってしまっていた
 ……が、隆史は基本良い人なので、その考えを一瞬で打ち消すことにした

「竹田 お前、どうしてもナンパしたいんだよな?」
「どうしたんだよ?お前、真面目な顔しちゃって……」
「黙って聞け ……冬休みだってクリスマスだって女の子と遊びたいよな?」
「あ、ああ……」

 隆史の言いたいことが大体理解できたのだろう 竹田の顔がどんどん青ざめてきた

「それはいいとして、隆史」

 隆史がテストまでの約一週間、竹田に勉強をさせて冬休みを無事過ごさせてあげようと思って説得する途中、唐突に乱入者が現れた!
 隆史に勉強会のお誘いをしようと思っていたフィーナである 近くには当然婚約者である達哉が立っている

「彼がナンパをしている所を何度か見ているけど、成功した所を見たことが無いわ」
「フィーナ……それ言わない約束だって」
「あら、女の子は安い言葉であっさり落ちるほど安い物じゃないと思うわ」 
「そりゃお前はそうだろうけどさ……」
「私は彼に現実と言うものを教えてあげようと思ってるのよ? いわゆるこれは私の親切心と言うものね」

 フィーナの言葉に、隆史と竹田は真意を測りかねるような表情になる 教室に残っている人間では達哉と雨情とエスペリア、そしてかがみだけがその真意を完全に理解し、あきれ返った表情をしていた

「あなたがナンパに成功した可能性はどのくらいかしら? その少ない成功率で貴方の恋人さんになった女の子はどのくらいかしら?」
「あぁ、そー言うことか」

 ここまでフィーナの言葉で隆史もフィーナの言いたいことが理解できたのである つまりは言うまでも無く、ナンパしたって意味が無いと言うことである
 フィーナの竹田の方は今にも泣き出しそうな表情になる フィーナはその表情に気付かずにさらに言葉を続けて行く

「対してうちのクラスの男性陣だけでも雨情に雄仁に隆史、そして私の愛する達哉はちゃんと恋人がいるわ ……あなたはその意味がわかるかしら?」
「単純ですよ 古人曰く二兎を追うものは一兎をも得ず ……竹田先輩の場合、その兎を20も30もおっかけてますから」

 フィーナの問いに答えたのは竹田じゃない この教室に残っていたエスペリアを迎えに来た恋人の高峰悠人である
 彼はもちろん一年ではあるが、たまにエスペリアに会いに来てるため、このクラスの生徒とも結構仲が良いのである

「う……う……」
「おい、竹田どーした」

 竹田の声に、さすがに心配になった隆史は、声をかけてみるが……

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「あーあ……泣いちゃったよ…… しかも帰っちゃったよ」
「フィーナ、やりすぎじゃね?」
「いいのよ 彼の行動に迷惑してる女の子がいるのも事実でしょ?」
「まぁ、確かに」

 一応フィーナの言うことは事実なので、その場にいる皆はとりあえず突っ込むことはしないことにした


  お姫様の暴走学園生活 期末テスト 準備二年生サイド


「やー、それにしてもフィーナも結構性格悪いねぇ……」
「あら、そうかしら?私は至極当然のことを言ったまでよ?」

 テスト勉強も一段落がつき、家事完璧なメイドミアお手製のお茶とお菓子を楽しみながら、つい2時間前の竹田の行動が話に上がっていた

「俺としては竹田の補修を何とか回避させたかったんだが……いくらなんでも言いすぎだと思う」
「う……ごめんなさい……」

 隆史の責めるようなジト目に、フィーナも流石にちょっと申し訳なくなり、しゅんとなってしまう

「ま、二兎云々を言わせようと思った瞬間に悠人が現れたわけだし、途中まではお前の目算通りだった訳だ 問題を上げるとしたらエスペリアに悠人を抑えてもらわなかった所だな」
「そうね 反省してるわ」

 フィーナの言葉に、隆史は「よろしい」と言いたげにウィンクをする
 その態度に達哉達も思わず噴き出しそうになってしまう

「コレで竹田君に泣かされる女の子の数が減れば良いんだけどねぇ」
「逆じゃあないか?ナンパに失敗して竹田が泣く回数が減るんじゃないの?」
「……翠さんもそうだけど隆史も結構失礼よね……」

 この日自分が竹田に言ったことを忘れて、フィーナは隆史と翠の言葉についあきれてしまう

「んじゃ、俺たちも補修を受けないためにもそろそろ再開するとしますか?」
「そうね 補修になるとせっかくの冬休みが潰れちゃうもの」
「すいません!達哉さんはいらっしゃいますか!?」

 テストの後にある楽しい冬休みのイメージを膨らませたその時、家の戸が開いて女性の声が響いた
 ドタドタと激しい音の後、居間の中に入ってきたのは、月王国スフィアの武官であり、達哉や麻衣の従姉さやかの大親友のカレン・グラヴィウスであった

「どーしたんですか?そんなに慌てて……」
「あの、さやかと私がいつもより早く仕事が終わったのでお酒を飲みに行ったのですが……途中で千春さんと陛下が現れて、一緒に飲むことになっちゃいまして……」
「カレンさん以外の三人が酔い潰れちゃったわけか」

 カレンの説明に、達哉はちょっと泣きたい気分になった 従姉が酒の席でカレンに迷惑をかけるのは何時ものことだが……それはそれで十分に問題があるが、まさか父千春までもがカレンに迷惑をかけるとは思わなかったからだ

「カレン、どんな事情があるにしても嘘は駄目よ お父様と義父様が無理やり貴方とさやかをお酒の席に誘ったのでしょう?」
「は、はい、全くもってその通りです……申し訳ありません……」
「か、カレンさんが謝る事じゃないですよ!悪いのは全部従姉と父ですから!カレンさんは何一つ悪くないですよ!」
「後お父様にも責任はあるわ カレンは何一つ気にする事は無いわ むしろお父様たちをここまで連れてきてくれたのでしょう? 逆にお礼を言わなきゃ駄目だと思うわ」
「そ、そんな……凝縮です……」
「そんなことより三人をベッドまで連れてこーぜ 達哉、雨情、手伝って」
「やれやれ……しょうがないな……」

 ぼやきながらも隆史と雨情は酒に酔って落ちた三人の面倒をみるため、テスト勉強を中断させることになった

「はぁ……グダグダだ……」

 思わずつぶやいた達哉のこの一言が、その時の皆の気持ちを思いっきり代弁していたのは言うまでも無いことだろう

 次回に続く


 あとがき
 期末テスト編とうとう本格始動です しかし前半部分が思ったより長くなったな……
 しかしドタバタな部分は何時もの事だけど今回はさらにグダグダな展開になっちゃいましたね(苦笑)
 次回は一年生の準備となります さてどーなることやら(苦笑)

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