「ねぇ、達哉!外で白い何かが降ってきたんだけど!」

 体育祭が終わって暫く経ち、時は12月の寒いある日の放課後、フィーナが何気なく外を見るとその瞳に白い物が映る

「あー……とうとう降っちまったかぁ」
「降っちまいましたなぁ」
「なんだか綺麗なんだけど……何かしら?」

 生まれてから月で暮らしていたフィーナが、心から不思議そうな表情をする
 その表情に、あーもう!そんな表情も絵になりやがるぜこんちくしょう!などと思ってしまう達哉だったりする

「あれは雪だな あの量じゃあ流石に積もりはしないと思うが……」
「へぇ……不思議ね……」
「不思議なのは同感だが、外に出ると寒くてかなわんのも事実だけどな」
「そうね……」

 隆史の言葉はムードもへったくれも無い、とはフィーナも思ったが、とりあえず寒いのも事実なので、同意をしておくことにした

「んじゃ、バイトがあるからお先に」
「ああ」
「またね」

 いち早く帰る支度をしていた隆史を見送った二人は、のんびりとした速さで教室を出て行った


  お姫様の暴走学園生活 期末テスト 準備少し前編


 「そういえば隆史君、来週はテストじゃなかったかしら?」

 その日の放課後、たくさんの客を捌いて暇な時、隆史の恋人であると同時にこのフラワーショップ苗の店長でもある笹川早苗は脳裏に浮かんだことを隆史にきいてみる

「あー……そーいやそーでしたね」
「……そーでしたねって……大丈夫なの?」

 呑気な恋人の言葉に、さすがに心配になったのか、少々うろたえて早苗は聞いてみる

「大丈夫ですって!早苗さんは心配症ですねぇ」
「だって……」
「俺だって早苗さんとデートしたいんですから、補修受けるような真似しませんって」
「で、でーと……」

 隆史の一言で、早苗の顔が瞬間湯沸かし器よろしくの如く顔が真っ赤になる
 実のところ隆史はこの早苗の表情が好きだったりする 思わず抱き寄せてキスの一つもしたい……そう思った時だった

「こんにちはー!」

 乱入者は果たして月のお姫様フィーナとそのメイドミアだった
 その絶妙なタイミングで現れた二人を、隆史は思わず恨めしそうな視線を向けるが、フィーナは敢えてスルーし、ミアに至ってはその視線に気づかない

「早苗さん、さやかの名前で予約してると思うんですけど」
「え、ええ、聞いてるわ 隆史君、用意してあげて」
「うーい!」

 早苗の言葉に隆史は残念そうな顔をしつつ、倉庫に向かって行く

「そ、そーいえば、フィーナさんはテスト、どうなの?」
「もう次で三回目ですからね 慣れた物ですよ」

 隆史の言葉で赤くなった頬を誤魔化すように、早苗は言葉を出していく

「商品の確認、頼むよ」
「ええ、分かったわ」

 二つ三つ世間話続けるうちに、隆史が幾つかの花をフィーナとミアに渡す

「ええ、間違いないみたい 早苗さん、ありがとうございます」
「ええ これからも御贔屓に♪」
「ま、当然だ 早苗さんだからな」
「なんで貴方がえばってるの?」
「うっせバカ お前でも早苗さんは渡さないからな ま、他の奴に渡すぐらいだったらお前に渡すが」
「心配はいらないわ 私にはミアがいるもの」
「そうだったな」
「??」

 隆史とフィーナのバカな会話に、早苗は苦笑いを浮かべ、ミアの方は訳が分からないと言う表情になる

「それじゃあ、また明日ね 隆史、冬休みに誰かさんとデート三昧ににしたかったらちゃんと勉強しなさいな」
「う、うるせえ!このバカ!お前こそ仕事に明け暮れて補修を受けんじゃねえぞ!」

 隆史が一瞬で顔を真っ赤にし、フィーナを罵倒するが、相対する方はその言葉もどこ吹く風 笑顔で店から出て行ってしまう

「あんのやろぉ〜!」
「ま、まあまあ、隆史君」

 妙に感情的になった恋人を宥める早苗だが、ふと何かを思いついた表情になる

「そういえば、もうすぐテストなんだし、仕事の方は……」
「それは大丈夫ですよ 週に一回でも早苗さんの笑顔を見れると、逆に頑張れますから」
「もう……」

 二人の間には、ついさっきまでフィーナとミアがいたと言う事をあっさり忘れされる甘い物となった

「ただいまー!」

 その時、今度は元気な声が店内に響く この家の元気なお姫様、とはこのバカップルの弁である

「あさみ、お帰り」
「うん!えへへー」

 未来の伯父の優しい笑顔に、あさみも笑顔で返す

「じゃあ、晩御飯の用意をするわね 隆史君も一緒に食べてね〜」
「はい!早苗さんの手料理〜♪」
「兄ちゃん、ご機嫌だね〜」
「そりゃそうだ 早苗さんの手料理は最高だからな」
「もう、隆史君はまた……」

 そんなこんなで、その日もまた過ぎて行くのでした

 その夜

「そーいえば雪、積もらなかったね」
「そうだな」
「残念だなー 積もったらミアと遊びたかったのに」
「一月に入ったらある程度積もるだろうし、その時に遊んでもらえや」
「そうだねー 楽しみだなー」
「あさみ、ミアちゃんに迷惑かけちゃ駄目よ」
「はーい!」

 そんな会話がなされたとか

 あとがき
 とうとう期末テスト……かと思いきや、その準備のちょっと前のお話です そー言えばフィーナは月で生まれて月で育ったから雪なんて初めてだなと思って出来た物です
 今回はラブラブ成分が強かったですが、次回からは本格的なテスト準備となりますよ〜
 しかし隆史をちょっと感情的にさせすぎた、とちょっと反省(笑)

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