「しかし体育祭……か」
「? 風見君、どーしたの?」

 体育祭も真っ只中のその時、麻衣は隣にいたクラスメートであり同じ吹奏楽部員の透夜の呟きに気付いた ……否、気づいてしまった

「あぁ……体育祭って走ったり、玉入れたり転がしたり、なんか借りてきたりするんだよな?」
「う、うん、そーだよね?」

 透夜がいきなり言い出したいわゆる「体育祭の定義」に驚きつつも、麻衣はなんとか返答に成功する

「……でも、体育祭でテニスとか乗馬とかダンスがあってもいーと思わないか?」
「え……?」
「あぁ、この前泉先輩から借りたゲームでその三つがあったんだよ」
「た、体育祭で?」
「体育祭で」

 透夜の言葉にそのゲームがどんなものなのか訳が分からず、麻衣は思わず首を傾げてしまう

「ちょっと、二人とも!何そこでぼんやりしてるの〜?」
「あぁ、レスティーナ!お前、体育祭でテニスと乗馬とダンスがあったらどれがしたい?」
「風見君、駄目だってー!」

 突然現れた委員長・レスティーナに近づく透夜に、麻衣はその行動が一番正しかった……そう信じることしか無かったと後で兄の達哉に語っていた


 お姫様の暴走学園生活 体育祭編 本番中編


「貴方が朝霧さんね?」
「?はい……そーですけど、どうしたんですか、谷崎先生」

 なんだかんだでバカ騒ぎしていた三人の前に、ゆかりが唐突に表れる

「あんパン食べない?」
「は?」

 ゆかりの奇行に目を丸くした三人だったが……少し経ってレスティーナは何かを思いついたような表情になる

「あの、ゆかり先生、もしかして麻衣、榊さんと同じ種目に出るんですか?」
「!!何で分かった!?」
「なるほど……」

 真実が分かると、透夜と麻衣はやれやれだと言わんばかりに肩をすくめる

「朝霧はそんなに足速くないですよ そりゃフルート吹いてるから肺活量は強いでしょうけど……それよりD組の神楽を買収した方が……」
「やったわよ……」
「「「は?」」」
「でもにゃものやつが邪魔しやがったんだよ!畜生!私が何やったんだよ!」

 そりゃあんたが神楽買収しようとしたからでしょ〜?と言いたくなる三人だが、なんか殴られそうなので止めておくことに
 そんなこんなで麻衣や噂の二人の選手の出る200M走が始まることに

「しかし朝霧のやつも運が無いというか……相手は神楽と榊だしな……」
「なーに 三位になっても特に問題ないさ 根岸、俺達文化系の部活が体育系の人間に負けてないって所を見せてやろうぜ 一応お前ん所の部長もいるわけだしな」
「いや、あの、風見君はもともと剣道の道場に行ってたんじゃ……」

 しかしトラックの中ではレスティーナのツッコミもどこ吹く風 それでもスタートするとボケて遊んでいた透夜と根岸もトラックに集中する
 内容は前評判の通り、榊と神楽の二選手がいきなりトップギアで問答無用に走りだす
 しかしそのツートップの走りの内容はまさに正反対と言っても過言ではない
 冷静沈着で静かな走りをする榊に対して、気合全開で激しい神楽と言う表現が最も正しいだろう まぁ気合全開と言っても、二人の担任である谷崎・黒沢に比べたら大人しいものだが

「こりゃどっちか分からんぞ さぁ、どっちだどっちだ!?」
「風見……妙にノリノリだな お前、競馬とか好きだろ?」
「まぁな 賭けはしないが接戦とかそー言うのは好きだぞ」

 フフフ……と愉悦と恍惚に満ちた笑顔は根岸を引かせるには十分であったりする

「あのー200M、榊さんが勝ったけどー」

 そんなこんななバカをやっていたためか、透夜と根岸は最も重要な部分を見逃してしまいましたとさ


「あれ?なぁよみ……あれって、校長と五十嵐先生だよな?」
「本当ね 校舎裏に行くみたいだけど……何やったんだ?」

 そして体育祭のメニューも次々と消化していき、時間は昼休みに突入したときである
 智とよみは顔長な校長に引っ張られていく五十嵐を見つけてしまう

「……まさか五十嵐先生、お酒を飲んだんじゃ……」
「五十嵐先生でもそりゃねーだろ」
「いや、智の言う通りなんだよ」
「「は?」」
「だから、五十嵐先生、酒を飲みやがったんだよ それを校長がたまたま見つけて」

 ゆかりの説明に、普段バカな行動をしている智ですらついあきれてしまう

「あ、そーだ、校長がどんな説教してるか、見に行かないか?」
「ちょ、おま!智!さすがにそれはまずくねーか?」
「止めといたほうが良いぞ、校長、怒らせると怖いからな」
「いーじゃんいーじゃん、よみとゆかりちゃんがやりたくなきゃ大阪でも誘うぞー」

 言う事を言うと、たまたま近づいてきた大阪……本名春日歩……の腕を引っ張って行ってしまった


「あれ?お前、谷崎先生の所の暴走バカ……」
「そういうお前はさっき榊さんと勝負してた体育バカじゃんか!」

 校長と五十嵐の様子を見に行こうとした智の前に、二時間ほど前に智のクラスの長身の女子榊とデッドヒートを繰り広げた活発スポーツ少女神楽が現れた

「神楽さんは何しにここにおるん?」

 智の敵対的な表情とは裏腹に、大阪は何も考えてないような表情で神楽に問いかける

「っと、そーだった!さっき五十嵐先生が校長先生に連れられて行くのを見たから……」
「なるほど……私たちもそれを見に行くんだ 一緒に行くか? ってもすぐそこみたいだけどな」
「おう!」

「前々から言おうと思っていましたが五十嵐先生……このようなイベントの時にお酒とは不謹慎だとは思わないのですか!? ヨーティア先生も谷崎先生もこの時は控えてると言うのに……!」

 そして三人が向かった人のいない校舎裏では、校長の絶叫が響いていた その校長の前では五十嵐が正座させられている ……土の上で

「ひぇ〜〜〜〜校長って怒らせると怖ぁ〜〜〜〜」
「でも校長先生って怒ってても体をフルフル震えてるんだな……」
「五十嵐先生はなんで土の上で正座させられとるんやろな?足いたくないんやろか?」

 五十嵐に対する校長の姿をまさに三者三様のコメントを出す三人 しかし……

「あなた達……」
「やべ!バレた!」

 いつのまにか校長が後ろにおり、三人は五十嵐とともに校長に説教されることになったとさ

 次回に続く

 あとがき
 神楽を出せた〜! わーいわーい!つーか校長が意外に使えるな……(笑)
 ちなみにテニス・乗馬・ダンスが体育祭に……の部分は事実です そー言うゲームがあるんですよ

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