「そーいや、雨情」
「どうした、隆史」

 体育祭が本格的に始まる数分前、隆史と雨情はストレッチをしながらものんびり過ごしている 緊張感という言葉からは完全にかけ離れている状況である

「職員室で聞こえたんだが、今年の選手宣誓はお前んとこの一年がやるんだってな」
「ああ、うちの宮子ってやつか どうしてもやりたいって立候補したって言ってたな」

 その時の一年の表情を思い出したのか、雨情はあきれた表情になる 美術部員の一年では空閑以外の知り合いがいない隆史にとって、あまり想像の出来ない話である

『開会式を開始します 生徒教職員の皆さんは整列してください』
「っと、始まったか」
「みたいだな」

 そんなこんなで開会式が始まり、選手宣誓に入ると同時に一年の女の子が大の上に上がる
 隆史の目に映った女の子の印象は、彼女がどうしても美術をやるような女の子には見えなかった
 そんな彼の感情とは裏腹に物事は進んでいき……

『宣誓!我々は〜スポーツマンシップを乗っ取り〜!』
「いや、乗っ取るんかい!」

 この瞬間、このカテリナ学園の生徒教職員の心は一つになったと言われている


 お姫様の暴走学園生活 体育祭編 本番前半


「まぁ、選手宣誓は少々問題あったけど、いざ本番になると気合が入るわね」
「全くだわ 今までの成果を発揮しなきゃね!」
「気合を入れるのは良いけど、フィーナに柊、ついでに高見沢に遠山 体育祭はお前らのダイエットのためにあるんじゃないからな」
「わ、わ、わ、分かってるわよ!」
「「あたし達ついで扱い!?」」
「集まってるな〜」

 なんやかんやと騒ぐクラスに担任桜庭が現れる

「今更言うつもりはないが、今日は体育祭だ 谷崎先生みたいにクラス一位を取れなんて言うつもりはないが……」
(谷崎先生ってそんなこと言ってるんだ……)
「だからと言って、手抜きをしたらどーなるか、分かってるな それと、松本先生はともかく、ふゆきの世話になるためにわざと怪我をするような真似をしてみろ……」

 言ったん言葉を止める桜庭の声に、生徒は皆息をのむ ……主に彼女のいない男子生徒の大半が

「そんときはあたしの教師人生すべてをかけてそいつをつぶす それを覚えておけ さあ、最初の100M走は誰が出るんだ!?」

 桜庭の恐怖におののいている一部男子生徒を横目に、フィーナは限りなく普段通りに手を挙げ、トラックに向かっていった



「次はパン食い競争になるわけだが……」

 二つ、三つと競技を終え、この日の為に作られたしおりを確認した隆史は、たまたま近くにいたかがみに視線を向ける

「何故にダイエットをしてるお前さんがこれに出るわけ? 激しく今更感は否定しないが」
「なっ!べ、別に良いだろ!?文句あるのか?」
「いや、無いけどさあ……」
「まぁ、隆史の気持ちは分かるわね 本来の目的と180度違う競技に出たら、誰だって隆史みたいな気持ちになるわ 事実私だって隆史と同じ気持ちだし」
「ぐ……」

  隆史やフィーナの後ろでは、達哉と雨情が「うんうん」と二人に同意する
 それどころか、みさおが意地の悪い表情でかがみに近づいていく

「ほっほぉ〜う……ひぃらぎはダイエットしてるのか〜」
『パン食い競争に出場する選手の皆様は、トラックに集まってください』

 みさおが次々と攻撃しようとした瞬間、それは来た かがみにとって救いになる声が

「まぁ、ダイエットを気にしすぎて最下位になるような真似だけはするなよ」
「なんか須尭の普通な対応が一番ムカツク!」
「……ねえ菜月、そういえばこの競技ってわざわざパンを食べなきゃ駄目なのかしら?」
「駄目じゃないんだけどね……隆史とみさおはかがみをからかってるの 須尭君は素で忘れてると思うよ……」

 結果としては、気合を入れすぎたかがみがパンのつり下がった台を押し倒してしまったため、失格となってしまいましたとさ

「ねえ達哉」
「何を言いたいかは想像できるが、言ってみてくれ」
「かがみさんってあんなにおバカなキャラだったかしら?」
「当の本人の前で言わないのが親切ってやつだからな?」
「ええ、その役目はみさおさんやこなたさんに譲るわ」
「……言いたかったんだ」

 次回に続く


 あとがき
 とうとう体育祭本番です 漫画ひだまりスケッチとアニメらきすたにあったシーンを使いました ちなみに最初選手宣誓を乗っ取り〜の部分をフィーナにさせようと思いましたが、結局宮子にさせました
 次はやっぱりゆかりちゃんメインになるかなー 神楽とか出したいし

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