誰が言ったのであろうか……文化祭は酒の飲めない祭りであり、その為つまらない祭りだと
 しかし、お酒が飲めなくてもお祭りと言うものは楽しいものである
 その最たる例が準備にあると考える人も多いかと思う それは彼ら1年B組に所属する彼らも感じている事の一つである

「あれ?そういえば根岸君がいないけど……部活の方に行ってるの?」

 その最中、クラスの委員長であるレスティーナ・ラキオスが短気でせっかちでやかましい美術部所属の男子生徒がいないことに気づく
 そんな男でも居ないと寂しいものだと、当の根岸が病欠した時に言ったら、親友でもあるクラスメイトの高嶺悠人や風見透夜に「やかましさで言えばお前も同じだからな」と返されたことがあったりするのだが
 閑話休題

「トイレじゃないかな?特に何も言わなかったけれど」

 レスティーナの疑問に即答したのはショートカットの赤毛がその明るい性格をこれでもかと表現しているヒミカ・レッドスピリットである

「ふぅーん…… 悠人君も透夜君も今日はバイトで忙しいみたいだから、根岸君に唐突にいなくなるのは勘弁してほしいんだけど……」
「でもレスティーナさん 噂をすれば影、みたいよ? 準備で学校中が騒がしくなっているのにあからさまに大きい足音が聞こえるんだけど」

 頭が痛いと言わんばかりの態度を見せたレスティーナに、今度は根岸と同じ美術部員の空閑木陰が答える
 その時だった

「大変だ大変だ!」

 教室の戸を大きい音で開いたのと同時に、話の主役であった当の根岸大地が現れる

「うちの副部長が……メイド服を着せられてるんだ!」

 レスティーナや空閑らが「どうしたの?」と聞く前に、その本人が美術部副部長……須堯雨情をよく知る人間ならばあまり想像したくない話をぶっちゃけるのであった


 お姫様の暴走学園生活 学園祭準備編 一年生SIDE


「で、なんでわざわざ確認させろなんて言うんだ?信じてねーのかよ?」
「根岸ちゃんの言ってる事を信じてるからよ」

 根岸が語った内容を聞いて、その教室にいた生徒の大半は、「なーんだ」の一言で済ます事にした
 例外をあげるとしたら、雨情の恋人でもある空閑と、雨情の親友でもある達哉の妹の麻衣の二人だけであったりする

「雨情さんのことだからもはや制服に着替えてるでしょうけど、ハリオン先輩あたりがデジカメに撮ってくれてるでしょうからね」
「空閑が付いて来た理由はわかった だったら朝霧は何でついてくるんだ?」
「決まってるじゃない もしかしたらお兄ちゃんや隆史先輩がメイド服を着てるかも知れないじゃない?」

 麻衣の意地の悪い表情に、思わず呆れてしまう根岸である
 そんなこんなで目的の教室に付くとその中から聞こえたのは文化祭特有の喧騒ではなく、笑いを抑えようろ努力している女性の声である
 何事かと中を除くと、そのクラスの担任である桜庭ひかる教諭がいた その近くにはあからさまに「あらあらまあまあ」と言わんばかりのハリオンもいた

(ど どーしてハリオン先輩がいたのが気付かなかったんだろう……)

 思わず麻衣が思ってしまう物の、とりあえず教室内に危険はなさそうなので、とりあえず失礼させてもらう事に

「あらあら〜 麻衣さんに木陰さんに根岸さんじゃないですか〜 こんにちは〜♪」
「あ、ああ こんにちは」

 毎度のことながら相手のペースを崩すような会話に根岸は苦手意識を改めて持ってしまう

「それよりお兄ちゃん達は?もう帰っちゃいましたか?」
「いえいえ〜 みんな文化祭の勉強ですよ〜
 お料理とか、接客の〜」
「それよりハリオン先輩 雨情さんがメイド服を着たって本当ですか?」

 ともかく根岸が持ってきた情報の真偽を知りたかったのだろう 空閑が問答無用に会話に入っていく とりあえずハリオンとの相性が悪い根岸ではできない芸当だろう

「はい〜、本当ですよ〜 フィーナさんが提案したのを翠さん達が賛成して〜 ちなみに服はこちらです〜」
「こ これが雨情さんの着
ていた……」

 普段あまり表情に変化のない空閑が、あからさまに驚愕の色に染まる そしてその大きなメイド服を愛おしそうに抱きしめる

「えーと……それで写真とか、そういうのは……?」
「今桜庭先生が持っていますよ〜」

 ハリオンの言葉にいつの間にか笑いが収まったのか、桜庭教諭は鷹揚に頷き、空閑にデジカメを渡す
 デジカメを操作し、驚愕の表情をしていた空閑は喜びの色に徐々に変わっていく

「あ、あの……雨情さんの写真が欲しいんですが、どうすれば……」
「簡単ですよ〜 この学校のパソコンを使わせてもらいましょう〜」
「先輩先輩!お兄ちゃんとかはメイド服着てないんですか?」
「はい〜 フィーナさんはちょっと着せてみたいとは言ってたんですが、時間が無かったので〜 家庭科室にいますから、ちょっとだけでも会ってみては?」

 言いたい事を言うと、ハリオンは空閑を連れて教室を出て行ってしまう とりあえずいつものことなので「そうします」と言うのはやめておく麻衣である

「んじゃ、いい加減戻るか 朝霧は兄貴に会ってから戻るんだろ?レスティーナ達には俺から言っておくから、ゆっくりして来いや」
「あ、うん ごめんね〜」

 麻衣の言葉に頷き、根岸は教室から出ていった 気付けばいつの間にか桜庭教諭もいなくなっている 職員室に戻っていったのだろう
 根岸に続いて教室を出ようとする麻衣だったが、改めて静かな兄のクラスの教室を見てみる
 達哉は授業中恋人と変なことをしていないだろうかと少し不安になったりもするが、まぁ心配するのも無駄なのだろうと自分に言い聞かせてみる
 とりあえず麻衣は兄とその恋人に会うため、文化祭の準備の為の喧騒の中に入っていった
 ……文化祭までもう少しである

 次回に続く

 とりあえずおまけ
根岸「戻ったぞ〜」
ヒミカ「で、須尭先輩のメイド姿、見れた?」
根岸「お前、妙に趣味悪いぞ」
ヒミカ「いいじゃない で、どうだった?」
根岸「とりあえずハリオン先輩にプリントを作ってもらってるらしい つか俺は一度見たんだっての」
ヒミカ「ちぇ〜 残念……」
根岸「とりあえず空閑に写真見せてもらえばいいじゃねえか」
ヒミカ「それもそうだね」

  あとがき
 文化祭準備編一年生編です いかがでしたでしょうか
 メインは……誰だろう 空閑?それとも根岸? ハリオンや麻衣じゃないのは確かです
 しかし空閑と変換しようとするといつも久我と言う文字が最初に出てくるとです……(笑)

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